研究概要 |
補中益気湯(ホチュウエッキトウ:補中)におけるインフルエンザウイルス(Inf)の発症抑制機構の解明を目的として、以下の検討を行った。 (1) Inf感染増殖過程に対する補中益気湯の作用部位の特定 補中にはウイルスとコンプレックスを形成することによるウイルス直接不活化効果のある可能性が示唆された。また感染増殖過程における作用部位を特定する目的でin vitroでMDCK細胞に感染し補中を添加した場合としない場合において、経時的に培養細胞内と培養液中のウイルス感染価を測定した結果、補中はInfの細胞への吸着・侵入過程を阻害することが明らかとなった。 (2) 感染細胞内における抗ウイルスシグナル伝達系に対する影響 Inf感染前後におけるTOLL様レセプター由来MyD88経由I型IFNシグナル伝達系 (TLR7、TLR9)及びNF-κBを介する種々抗炎症性サイトカインの分泌に関わるシグナル伝達系 (MDA5、LGP2、IKK-I、IRF3、IRF7、 Stat1、Stat2、IFN-β)のmRNAレベルの変動を定量PCRで検討した。TLP7,9、IKK-I, IRF3は感染によって上昇したが、補中による影響は確認されなかった。またELISAによってGM-CSFのみ補中によって有意の上昇を示した。検討したDefensin family (α-defensin subtype- 1,3,4,5,6、β-defensin subtype-1,2,3,4)のうち、α-defensin-1,β-defensin-3のmRNAレベルの感染による上昇が補中によって有意に増強されていた。 (3) 最終年度ではオートファジー誘導能をGFP-LC3 plasmid移入細胞を用いた発現蛋白の検出によって検討した。Inf感染によって誘導されたオートファジーが補中によって増強されていることが示唆された。
|