研究課題
研究の目的高齢者を対象とした前向き研究(LAIDS study、BMJ2009)は、大脳皮質下病変が認知障害、抑うつ、転倒、誤嚥など老年病症候群と呼ばれる精神・身体疾患に関連することを示した。しかし、本邦ではこのような前向き観察研究は極めて乏しい。本研究ではグループホーム入居者を対象として老年病症候群関連症状の推移とMRIの経時的観察を中心とした2年間の前向き研究を実施する。平成23年7月1日から、グループホームに入居している方々のうち30名を対象として2年間の前向き研究を行い、脳血流に影響を与える心臓の機能と脳微小循環障害の結果生じるとされる脳皮質下病変が、グループホームの入居者の認知機能および日常生活活動度とどのように関係しているかに関して、前向き観察研究を開始した。実施して検討する。検討項目1)介護状況の定量的評価:入浴回数、介護日誌による歩行状況の確認、家族の面談頻度と面談時間の確認、排泄の実施状況の確認、食事状況の確認等。 2)認知機能、運動機能評価:MMSE(Mini-Mental State Examination)により評価を行う。運動機能評価に関しては要介護度認定調査票を用いて評価を行う。 3)頭部MRI検査、または脳外科医あるいは神経内科医による神経学的評価:脳血管障害の有無や脳皮質下病変の有無、海馬傍回定量評価等を行い、脳の器質的変化について評価する。 4)心機能検査:心電図、胸X線検査、ホルター心電図検査、心エコー図検査を実施し、脳塞栓症の原因となる不整脈や心拍出量低下の原因となる心機能低下の有無を検証する。 5)採血検査:末梢血、肝機能、腎機能、心筋バイオマーカー、脂質、多価不飽和脂肪酸、他。現在観察開始から9ヶ月が経過した。
2: おおむね順調に進展している
当初の計画における(1)介護状況の定量的評価(2)認知機能、運動機能評価(3)頭部MRI検査、または脳外科医あるいは神経内科医による神経学的評価(4)心機能検査(5)採血検査:末梢血、肝機能、腎機能、心筋バイオマーカー、脂質、多価不飽和脂肪酸、等はグループホーム入居者の体調等により実施の可否が大きく影響するが、現在までのところ概ね順調に進んでいる。
平成24年度は、平成23年度に開始した研究計画を継続する。7-8月に検討項目のうち、頭部MRI検査を除く項目の検討を実施する(介護状況の定量的評価、脳外科医あるいは神経内科医による神経学的評価、認知機能、運動機能評価、心機能検査、採血検査)。平成25年度は、平成23年度に開始した研究計画を6月末日で終了する。終了直前に介護状況の定量的評価、頭部MRI検査、または脳外科医あるいは神経内科医による神経学的評価、認知機能、運動機能評価、心機能検査、採血検査を実施する。さらに7月以降の期間に、得られた結果を取りまとめ、成果の発表を行う。
平成24年度の研究は概ね順調に進展したものの、複数のグループホーム入居者の状態が完全に同一ではないため、検査の内容に若干の差異が発生した。そのため研究費を90円繰り越すこととなった。当該研究費は、平成25年度に研究成果の取りまとめを行うための費用とする。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (7件)
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