研究概要 |
平成23年度は34名の健常女性に対して実験を行った.「やせ」「標準」「肥満」の体形につき、それぞれ12方向×2ポーズの計72枚の写真を使った課題を作成した.fMRI撮像においては、各々の画像を提示する前に、以下の2種類の教示画像のいずれかを2.5秒呈示し、その教示に従って体形画像を提示し、次の課題を与えた.1)画面女性の体重の推定 (weight estimate task),2)画面の女性と自分の体形の比較 (compare task).各々の体形画像は各5秒ずつ提示し、その際の脳血流変化を測定した.撮影後に各々の提示画像に対する推定体重、体形画像と比較したときの不安感、理想体重とともに,EDI-2(体形の不満など),STAI(一般的な不安)の回答を得た. 標準体形及びやせ体形の画像と自分の体形を比較したときの不安感は、EDI-2における「体形の不満」と正の相関を示した(標準体形r = 0.526, p<0.0001,やせ体形r = 0.536, p<0.05) 次に、前述の3つのタイプの体形画像を提示し、自分との体形比較を行ったときの脳活動をfMRIで調べると、標準体形の画像との体形比較を行っているときの不安感が高いほど、右の前島皮質の脳活動が高くなると言う正の相関がみられた(r=0.49, p<0.005 uncorrected,k=30). 前島皮質は,不安感などの陰性感情や,身体情報を統合し,自己の身体イメージを形作ることに関係していると言われる.神経性食欲不振症でも前島皮質の異常が指摘されており,食行動異常が無く体形の不満が高いのみの健常人でも同様の部位に変化が見られたことは興味深い結果と考えられた.
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