研究課題/領域番号 |
23659390
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研究機関 | 産業医科大学 |
研究代表者 |
兒玉 直樹 産業医科大学, 医学部, 講師 (10352303)
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キーワード | 摂食障害 / 機能画像 / ストレス |
研究概要 |
昨年度までの研究結果を踏まえ,本年度は回復した神経性食欲不振症患者12名(Recovered AN群)および精神疾患の既往のない健常女性12名(control群)を対象とした. 「やせ」「標準」「肥満」の体形につき、それぞれ12方向×2ポーズの計72枚の写真を作成した.fMRI撮像においては、各々の画像を提示する前に、画面の女性の体重を推定,もしくは画面の女性と自分の体形の比較と言う教示を2.5秒提示した.各々の体形画像は各5秒ずつ提示し、その際の脳血流変化を測定した.撮影後に各々の提示画像に対する推定体重、体形画像と比較したときの不安感とともに,体形の不満をEDI-2,一般的な不安をSTAIで回答を得た.機能画像の解析では,先行研究で体形比較の際の陰性感情に関連するとされる扁桃体,島皮質,前帯状回にROI(regions of interest)を作成しROI解析および全脳を対象とした解析を行った. 心理テスト上では不安感に差はなく,体形の不満はRecovered AN群がむしろ有意に低かった.fMRIの結果では,体重推定をしているときの脳活動は両群間に有意差はなかった.しかしながら体形比較をしているときにはRecovered AN群が両側扁桃体,両側前帯状回,右島皮質,両側前楔部~視覚野の活動が有意に高かった. このことから体形比較での不安感や他者の体形への高い関心など摂食障害に関連した脳の活動は,見かけ上の症状が消失しても残っており,摂食障害の高い再発率の関連があると考えられた.また,これらの変化は質問紙では捉えられず摂食障害の病態を解明する上での機能画像の有用性を示すものと考えられた. また,昨年度の研究結果を国際学会(ACPM)で発表しBEST POSTER AWARDを受賞した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度は,摂食障害の回復群に対して検討を行った.平成23年度に作成した課題をもとに,病態を詳細に検討するために「体重推定」と「体形比較」といった教示をして摂食障害に関連が深い「体形の不満」についてさらに詳細に検討した. 上記の結果通り体形の不満の形成に関係があるとされる,他者との体形比較のみで摂食障害回復群と健常群に脳活動の差が見られた.症状回復後も摂食障害に関連する脳活動が残っている事を示唆するような結果で,従来報告されている再発率の高さを説明すると考えられる知見であると考えた.本年度は機能画像を使って新しい知見が得られており,研究計画はおおむね順調に進展していると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度の回復群に対して得られた結果が,現在症状がある摂食障害でも同じように見られるかを検討して摂食障害に関連のある脳活動であることを確認する.また,他の心理テストと組み合わせて検討することによって,実験によって得られた脳活動の変化の臨床的な意味をより詳細に検討する予定である.
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次年度の研究費の使用計画 |
現在実験に使用しているMRIが8年以上経過している旧式のMRIで,昨年度中に破棄処分になる予定であった.そのために現在実験を行っているMRIが破棄になった後にも,新規のMRIで実験を継続するための機器購入を予定していた. その後,運用が今年度9月まで延長となったため,そのための予算を今年度に繰り越すこととした.今年度は患者群に実験を進める予定であるが,年度の途中で実験用のMRIを変更しなくてはならないため,現在のMRIでできる限りデータを集めながら,新規MRIで実験が継続するための準備を行う予定である.
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