C型肝炎ウイルス(HCV)ゲノムによってコードされるタンパク分解酵素NS3/4aプロテアーゼが、retinoic acid-inducible gene (RIG)-IからIFNβ誘導へと至る自然免疫経路をミトコンドリア外膜に存在するIFN promoter-stimulator (IPS)-1の特異的切断によって無効化し、肝臓におけるIFN活性化システムの機能不全を引き起こすことが、HCV持続感染化やIFN治療への抵抗性の原因の一つであることが示されてきている。我々は、発想を転換し、このNS3/4aプロテアーゼを逆用して、IPS-1と同じ切断部位をもつ転写因子モジュール(HCV-protease activated module; CPAM)を肝細胞内に送り込む(不活性型CPAM)プロジェクトを企てた。切断部位を切断し転写因子を活性化することで細胞内の自然免疫系を活性化させ、肝臓からのHCV完全排除を導くという計画である H23年度は、核内移行転写因子IRF7にミトコンドリア移行シグナル、およびIPS-1がもつNS3/4aプロテアーゼ切断モチーフであるC503アミノ酸残基を接続したモジュールであるCPAMを作製した。H24年度は、NS3/4aプロテアーゼを発現する非構造領域レプリコンの増殖するHuh-7細胞に導入してIRF7の核内移行を検証した。また、CPAMを保持する組替えアデノウイルスを作製し、CPAM組換えアデノウイルスのHCV・JFH-1株の増殖するHuh-7細胞に感染させ、HCV増殖に対する効果を検討した。Huh-7細胞においては、HCV量の有意な減少を観察しており、proof of conceptがなされたものと考える。
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