研究課題/領域番号 |
23659394
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
渡辺 守 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (10175127)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 腸管上皮 / バイオカプセル / 薬剤デリバリー / 炎症性腸疾患 / 初代培養法 |
研究概要 |
本年度は研究計画に基づき、以下の解析を行った。(1)腸管上皮バイオカプセル作成法の確立:消化管内視鏡生検検体からのバイオカプセルに先立ちマウス腸管組織からのバイオカプセル作成法の最適化を行い、以下の成果を得た。1)マウス小腸及び大腸組織より安定してバイオカプセルを培養し得る独自の技術を確立した。さらに同手法により確立したバイオカプセルを構成する上皮細胞は腸上皮幹細胞を豊富に含むことを明らかとした。2)上記方法により作成したバイオカプセルを大腸炎モデルマウスに経肛門的に投与することにより、腸管上皮を構成するクリプトとして長期生着することを確認した。さらにバイオカプセルがDSS投与により誘発された粘膜欠損・潰瘍面に選択的に生着し、潰瘍面を被覆する性質を有し、損傷粘膜に対する高い指向性を持つことを明らかにした。3)上記成果に基づき、ヒト消化管内視鏡生検検体を用いたバイオカプセルの作成を行い、マウス腸管組織と同様のバイオカプセル作成が可能であること確認した。(2)薬剤含有バイカプセルの作成技術の確立:上記方法にて作成したマウス腸管上皮由来バイオカプセルにつき、薬剤含有バイオカプセルとして応用可能であるか検討を行い、以下の成果を得た。1)バイオカプセルの外面にP-Glycoprotein の基質であるRhodamine123を添加することにより、バイオカプセル内腔へのRhodamine123の集積をライブイメージングにより経時的に観察することが可能であった。2)上記にて観察したRhodamine123は濃度勾配に逆行してバイオカプセル内に集積するのみならず、維持することが可能であることを確認した。上記の各成果は、腸管上皮由来バイオカプセルが上皮再生治療のツールとして技術的に実現可能であり、なおかつ臨床的有用性が期待できることを明確に示した重要な成果であると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、当初計画通り、マウス及びヒト腸管上皮初代培養技術を発展させ、バイオカプセルとして応用する技術の確立に成功した。具体的には、P-Glycoproteinの能動輸送を利用することにより、バイオカプセルに機械的侵襲を加える事なく、基質薬剤をカプセル内に高濃度に蓄積させるための基本技術と、蓄積濃度を制御するための輸送動態のモニタリング技術及び輸送チャンネル機能調節法の確立に成功した。このような技術的基盤の確立は全く他に類を見ない画期的かつ独自の技術と視点に基づくものであるばかりでなく、バイオカプセルに封入する薬剤の種類・量を容易に制御可能とした点で、汎用性の高い重要な知見を得たものと考えている。さらに当初計画を前倒しし、生体疾患モデルへの移植によりバイオカプセル単独による組織再生能の評価を行い、上記バイオカプセルそのものが生着することにより、粘膜再生を通した臨床的有用性を発揮し得ることを既に明らかとしている。上記成果は、バイオカプセルそのものの粘膜再生能を示したのみならず、バイオカプセルが欠損粘膜への強い指向性を持ってホスト腸管粘膜内へと生着・統合されることも明確にしており、本研究が目指す「損傷粘膜局所へのビンポイント薬剤輸送システム」が技術的に実現可能であること改めて確認できた重要な成果である。今後、含有させる薬剤の選択や安定した薬剤含有バイオカプセル作成技術の確立及び保存方法の開発と言った課題は残るものの、一部は当初計画を超える予定で既に成果を得ており、概ね順調に進行していると評価することが妥当と考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、当初計画通り、マウス及びヒト腸管上皮初代培養技術を発展させ、バイオカプセルとして応用する技術の確立に成功した。具体的には、P-Glycoproteinの能動輸送を利用することにより、バイオカプセルに機械的侵襲を加える事なく、基質薬剤をカプセル内に高濃度に蓄積させるための基本技術と、蓄積濃度を制御するための輸送動態のモニタリング技術及び輸送チャンネル機能調節法の確立に成功した。このような技術的基盤の確立は全く他に類を見ない画期的かつ独自の技術と視点に基づくものであるばかりでなく、バイオカプセルに封入する薬剤の種類・量を容易に制御可能とした点で、汎用性の高い重要な知見を得たものと考えている。さらに当初計画を前倒しし、生体疾患モデルへの移植によりバイオカプセル単独による組織再生能の評価を行い、上記バイオカプセルそのものが生着することにより、粘膜再生を通した臨床的有用性を発揮し得ることを既に明らかとしている。上記成果は、バイオカプセルそのものの粘膜再生能を示したのみならず、バイオカプセルが欠損粘膜への強い指向性を持ってホスト腸管粘膜内へと生着・統合されることも明確にしており、本研究が目指す「損傷粘膜局所へのビンポイント薬剤輸送システム」が技術的に実現可能であること改めて確認できた重要な成果である。今後、含有させる薬剤の選択や安定した薬剤含有バイオカプセル作成技術の確立及び保存方法の開発と言った課題は残るものの、一部は当初計画を超える予定で既に成果を得ており、概ね順調に進行していると評価することが妥当と考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は当初計画に則り、以下の課題を追求する予定である。1)内視鏡生検検体からのバイオカプセル迅速作製法の確立:マウス腸管上皮にて確立したバイオカプセル作成法をヒト腸管内視鏡検体へと応用し、ヒト腸管上皮由来バイオカプセル作成法を最適化する。2) 薬剤含有バイオカプセルの作製・保存技術の確立:バイオカプセルが本来有するP-Glycoproteinを介した能動輸送を利用し、高効率で内腔に蓄積可能な化合物を追求する。これを担体とした薬剤含有バイオカプセルの作成を検討する。3) 薬剤含有バイオカプセルの大腸炎治療効果の解析:上記にて作成した薬剤含有バイオカプセルをDSS腸炎モデルに移植することにより、その臨床的効果等を解析する。4) バイオカプセルの経内視鏡局所投与法の確立:内視鏡による病変局所への投与の至適条件を検討するため、最適なマウスモデルの検討を行うとともに、投与に用いるバイオカプセルをレンチウイルスによる蛍光標識する技術の開発等を行う。従って、研究費は細胞及び組織学的解析に関わる消耗品、及びマウス飼育・系統維持費が主な支出費目となる予定である。
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