研究課題/領域番号 |
23659401
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研究機関 | 札幌医科大学 |
研究代表者 |
山下 健太郎 札幌医科大学, 医学部, 助教 (90381269)
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研究分担者 |
有村 佳昭 札幌医科大学, 医学部, 講師 (80305218)
藤宮 峯子 札幌医科大学, 医学部, 教授 (10199359)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 骨髄間葉系幹細胞(MSC) / azoxymethane(AOM) / chemoprevention / 炎症発癌 / WNTシグナル |
研究概要 |
本年度の目的は、腸炎関連発癌に対して外因性MSCがどのように作用するかを明らかにすることとした.そこで,以下の3つの動物実験モデルと,IEC-6細胞株を用いた各種条件下の共培養実験により,azoxymethane(以下AOM)由来の大腸発癌に対するMSCの作用を検討した.すなわち,1)AOM/DSS発癌に対するMSCの作用の解明,2)Aberrant Crypt Foci(以下ACF)に対するMSCの効果,3)Acute apoptotic response to genotoxic carcinogen(以下AARGC)に及ぼすMSCの効果,4)ラット小腸上皮培養細胞株(IEC-6)を用いたMSCのin vitro腫瘍抑制効果の検討である. MSCは,AOMによる発癌のイニシエーションを抑制し,その機序は,O6メチルグアニン付加体を除去し,DNA傷害を減じて,腫瘍のイニシエーション自体を防ぐ予防的機構,あるいは,AARGCによるアポトーシスを回避した細胞をG1 arrestあるいはアポトーシスに陥れる機序であった. AOM/DSSモデル腫瘍の検討では,MSC投与群においてbeta-cateninのリン酸化が高率に認められ,beta-cateninのリン酸化認識部位における点突然変異のhot spotに差があり,MSCが,発癌過程のさらに別な作用点として,WNTシグナル活性化に直接影響を及ぼす可能性を示唆する点,興味深い.MSCがWNT/beta-catenin活性化経路に及ぼす影響とその生物学的な意義に関しては,今後のさらなる検討が必要である. 以上の成果は,今後MSC治療を臨床応用する際,発癌性に関する基礎データを提供し,発癌リスクを有する炎症性腸疾患(IBD)患者に対する新規MSC治療の臨床応用に向けて,重要である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画からは,かなりの逸脱が認められるも,MSC治療の臨床応用に向けた炎症発癌に対する具体的なデータが示されつつあり,おおむね順調に進展していると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,ヒト幹細胞リソースセンターの実質上の運営を通して,先端医療・先端医学のための研究に「早期献体」(fresh cadaver)を有効利用するための基盤整備を可能な限り急ぐ.その上で,ヒトMSCを用い,橋渡し研究としてGLP基準に則った慎重な前臨床試験(動物実験)を行うことで,早期の「腸管炎症と発癌に対する幹細胞治療の開発」を目指す.
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次年度の研究費の使用計画 |
本学において,fresh cadaverの先端医療・先端医学のための研究へ有効利用が可能になった時点で,可能な限り当初の研究計画に沿った研究を行う.すなわち,橋渡し研究としてGLP基準に則った慎重な前臨床試験(動物実験)を行うことであり,ヒトMSCのソースとして,未固定の「早期献体」(fresh cadaver)標本を有効活用し,これまでのわれわれの知見に対するproof-of-concept試験を行う.安全性薬理試験,毒性試験に用いるMSCは,GMP基準に則り培養調整し,網羅的メチル化解析による品質管理基準を設定する.その際,MSC治療反応性を予測するバイオマーカーを探索する.
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