研究課題
本研究は、細胞の増殖と運動が協関して組織再構築が起こる肝再生モデルを用いて、細胞内小胞輸送の側面からalpha-Taxilinに焦点を絞り、細胞の増殖と運動に関連する細胞内情報伝達系の「場形成」機構における新たな概念を構築することを目的としており、本年度は、alpha-Taxilin結合分子の同定とalpha-Taxilin局在小胞の同定を試みた。その結果、新たなalpha-Taxilin結合分子の候補となる分子を少なくとも三つ見出した。これらのalpha-Taxilin結合分子には細胞運動に関わることが明らかになっている分子が含まれており、alpha-Taxilinが細胞内小胞輸送を介して細胞運動にも関与している可能性が高くなった。また、alpha-Taxilin局在小胞が微小管依存性に細胞内に広く分布していることを明らかにすると共に、alpha-Taxilinが局在小胞と微小管とをつなぐリンカー分子として機能していることを明らかにした。さらに、次年度の研究計画である「alpha-Taxilinとその関連分子の遺伝子改変マウスを用いた肝再生におけるalpha-Taxilinとその関連分子の機能解析」を行うために、先ずalpha-Taxilinノックアウトマウスの作成を行い、蛋白レベルでalpha-Taxilinの欠損が確認出来たalpha-Taxilinノックアウトマウスの作成に成功した。alpha-Taxilinノックアウトマウスは、雌雄とも正常に発育して生殖能には異常を認めなかった。本年度の本研究で明らかになったalpha-Taxilinの性状、ならびに新たなalpha-Taxilin結合分子の同定、alpha-Taxilinノックアウトマウス作成の成功は、次年度以降の本研究の推進に大きく貢献するものと思われる。
2: おおむね順調に進展している
当初の本年度の研究課題のうち、alpha-Taxilin結合分子の同定に関しては、新たなalpha-Taxilin結合分子の候補となる分子を少なくとも三つ見出すことが出来た。さらに、alpha-Taxilin局在小胞の同定に関しては、alpha-Taxilin局在小胞の精製までには至らなかったが、alpha-Taxilin局在小胞が微小管依存性に細胞内に広く分布していることを明らかにすると共に、alpha-Taxilinが局在小胞と微小管とをつなぐリンカー分子として機能していることを明らかにすることが出来た。このように、本年度の本研究の目的は、ほぼ達成されたと考えている。
今後は、当初の研究計画通り部分肝切除後の肝再生モデルでのalpha-Taxilinと本研究で見出したalpha-Taxilin結合分子の動態を解析する。さらに、作成に成功したalpha-Taxilinノックアウトマウスを用いて部分肝切除後の肝再生の動態を解析する。
alpha-Taxilinノックアウトマウスの作成に当初の予想より早く成功したため、本年度使用予定の研究費の一部を次年度のalpha-Taxilinノックアウトマウスの解析に使用し、次年度の研究課題をより迅速に進めることとする。
すべて 2011
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (2件)
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