研究課題/領域番号 |
23659404
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
中野 裕康 順天堂大学, 医学部, 准教授 (70276476)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | TRAF2 / 腸炎 / インターロイキン10 / 好中球 / TNFa / LPS |
研究概要 |
我々はこれまでにTraf2欠損マウスの解析から、このマウスは出生後直後に重篤な大腸炎を発症することを見出した。そのメカニズムの一つはTNFα依存性の腸上皮のアポトーシスの亢進と考えられたが、その他の免疫学的な異常がTraf2欠損マウスで見られる大腸炎の発症に関与しているかについては、依然として不明である。我々は今回Traf2欠損マウス由来の末梢血および骨髄細胞中にIL-10を産生する好中球が増加していることを見出した。Traf2欠損マウスへの抗TNFα中和抗体を投与や、Traf2欠損マウスをTnfr1欠損マウスと交配することによりIL-10産生好中球は有意に減少する事から、TNFα依存性のシグナルが関与している事が明らかとなった。また骨髄キメラマウスを用いた実験から、Traf2欠損マウス由来の骨髄細胞を移入した野生型マウスでもIL-10産生好中球が増加することから、Traf2欠損マウス由来の骨髄細胞そのものがIL-10産生を起こしやすい内在性の欠損を有していることが示唆された。またIL-10産生好中球は野生型マウス由来の好中球をLPSやPam3KなどのToll様受容体のリガンドで刺激することによっても生じ、さらにそれは抗TNFα中和抗体で部分的に抑制されたことから、IL-10産生好中球はTraf2欠損マウスでしか見られない細胞ではなく、なんらかの炎症時に誘導されてくる可能性が示唆された。そこで、最後にIL-10産生好中球の病理的な役割を明らかにするために、Traf2欠損マウスに抗TNFα抗体と抗IL-10中和抗体を投与したところ、両者の抗体を併用した群でのみ長期の生存が認められたことから、IL-10を産生する好中球が免疫抑制的に働いており、Traf2欠損マウスで誘導された大腸炎の増悪に関与している可能性が示唆された(Immunol Cell Biol in press)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
IL-10産生好中球がTNFα依存性に出現すること、およびその出現はTraf2欠損マウスに特有の現象ではなく、LPSやPam3KなどのToll様受容体を介するシグナルによっていることを明らかにすることができた。さらに抗IL-10中和抗体と抗TNFα中和抗体を併用することで、Traf2欠損マウスで見られる大腸炎の改善と長期の生存が認められることから、IL-10産生好中球の病理的な役割の一つを解明することができ、研究は当初の計画以上に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究でIL-10産生好中球がLPSやPam3Kなどの刺激によりTNFα依存性に誘導されることを明らかに出来た事から、次の研究の展開としてIL-10産生好中球に発現している細胞表面分子をマイクロアレイ解析などを用いて網羅的に解析し、特異的に発現している分子がないかを探索するし、それらに対するモノクローナル抗体を樹立する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
IL-10産生好中球に発現している細胞表面分子を網羅的に解析するためにマイクロアレイ解析のための費用が必要である。また特異的に発現している分子に対するモノクローナル抗体を樹立するための経費が必要である。
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