研究課題
C型肝炎ウイルス(HCV)は我が国に多くのキャリアが存在する重要な感染症の原因ウイルスである。HCVはRNAウイルスでありそのゲノムは多様性に富む(quasispecies)ことが知られている。このquasispeciesのHCV感染症における意義は十分に解明されていないが、持続感染あるいは病原性に関わっていることが想定されている。ウイルスゲノムのquasispeciesに関してはこれまでのシークエンス技術では十分に解析ができなかった。本研究では飛躍的に遺伝子解析能力が向上した次世代シークエンサーを用いてウイルスゲノムのquasispecies解析法を確立する。さらに、今後対応が必要な薬剤耐性ウイルス解析への応用を検討する。最近の次世代シークエンス技術の開発により、ウイルスゲノムのquasispeciesに対する理解が大きく変化する可能性がある。次世代シークエンスを従来のPCR法と組み合わせ、HCVゲノムの多種性をウイルスゲノム全長にわたり解析する手法を開発した。その結果、HCV陽性血清1検体から、少なくとも3種類の独立したウイルスゲノムRNA配列を特定した。C型慢性肝炎患者の標準治療法であるインターフェロン/リバビリン(IFN/RBV)併用療法の感受性を決定する因子は複数報告されているが、その相関関係は明らかになっていない。今年度の解析で複数の感受性因子が一種類の配列上に共存していることが初めて確認された。さらに同一患者由来の経時サンプルを解析し、複数のウイルスゲノムに生じる変化と相関を解析した。また、従来の手法で決定したコンセンサス配列との比較を行った。
2: おおむね順調に進展している
次世代シーケンサーによるウイルスゲノム解析法を樹立し、解析を進めている。
同定した3種類の代表的なウイルスゲノムが、実際に患者血清中に存在することを、ファージライブラリー法を用いて確認する。決定した一患者血清内に存在する配列をそれぞれクローニングし、培養細胞あるいはキメラマウスでの増殖が可能か検証する。可能であればそれぞれの株の相関や感染性を解析する。治療感受性やウイルス遺伝子型の異なる患者群で解析をおこない、ウイルスゲノム存在様式との関係を解析する。
今年度解析方法を確立したので、来年度はその手法を用いてデータの解析をすすめる。今年度は解析方法の確立に集中したため、研究費の使用を予定よりも押さえたが、来年度はデータ取得と解析を加速するために博士研究員レベルの研究員を雇用して解析をすすめたい。
すべて 2012 2011
すべて 雑誌論文 (12件) (うち査読あり 11件) 学会発表 (31件)
Microbiol Immunol
巻: 56(5) ページ: 308-17
10.1111/j.1348-0421.2012.00437.x.
Gene.
巻: 496(2) ページ: 79-87
Biochem Biophys Res Commun.
巻: 415(4) ページ: 714-9.
PLoS One.
巻: 6(10) ページ: e26620
PLoS Pathog
巻: 7(10) ページ: e1002289.
J Biol Chem.
巻: 286(43) ページ: 37264-73
巻: 410(3) ページ: 404-9.
J Gen Virol.
巻: 92(Pt 9) ページ: 2082-7.
Vaccine.
巻: 29(29-30) ページ: 4821-8
Hepatology.
巻: 54(2) ページ: 425-33.
Gastroenterology.
巻: 141(1) ページ: 128-40
巻: 6(6) ページ: e21284.