研究課題
C型肝炎ウイルス(HCV)は我が国に多くのキャリアが存在する重要な感染症の原因ウイルスである。HCVはRNAウイルスでありそのゲノムは多様性に富む(quasispecies)ことが知られている。このquasispeciesのHCV感染症における意義は十分に解明されていないが、持続感染あるいは病原性に関わっていることが想定されている。ウイルスゲノムのquasispeciesに関してはこれまでのシークエンス技術では十分に解析ができなかった。本研究において飛躍的に遺伝子解析能力が向上した次世代シークエンサーを用いてウイルスゲノムのquasispecies解析法を確立することができた。次世代シークエンスを従来のPCR法と組み合わせ、HCVゲノムの多種性をウイルスゲノム全長にわたり解析する手法を開発した。その結果、HCV陽性患者の7年おいた経時血清サンプルから、3種類の独立したウイルスゲノムRNA配列を特定した。C型慢性肝炎患者の標準治療法であるインターフェロン/リバビリン(IFN/RBV)併用療法の感受性を決定する因子は複数報告されている。本研究で複数の感受性因子が一種類の配列上に共存していることが初めて確認された。従来のPCRおよびクローニング法によるコンセンサス配列を有するウイルスゲノムは患者血清中には存在しないことが判明した。さらにIFN/RBV併用療法の感受性に関与するコア70番の配列により独立した2群のウイルスゲノムが存在し、それぞれ個別に進化していることがわかった。このコア70番によるウイルスゲノム分類は他のHCV陽性患者3例でも確認することができた。このHCVの新たなquasispecies存在様式の病原性や薬剤耐性に関する意義を検討する必要がある。
2: おおむね順調に進展している
本研究により次世代シークエンスを従来のPCR法と組み合わせ、HCVゲノムの多種性をウイルスゲノム全長にわたり解析する手法を開発することができた。さらにHCVゲノムのquasispeciesの存在様式について新たな知見を得ることができた。
HCVゲノムのquasispeciesの存在様式について新たな知見を得ることができた。結果は非常に興味深いが、その一般性を確認するために追加サンプルの実験が必要となった。追加の解析を実施しないと次に予定していた機能解析実験を実施できないことが判明した。
HCVゲノムのquasispeciesの存在様式が一般的かどうかをサンプル数を増やして確認する。また、同定したウイルス配列をクローニングして機能解析を実施する。
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