研究課題/領域番号 |
23659410
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
村越 伸行 筑波大学, 医学医療系, 講師 (80447218)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 分子心臓病態学 |
研究概要 |
本研究は、次世代ジーンターゲッティングシステムを用いて、心機能・形態・心臓刺激伝導能を指標に大規模かつ網羅的なin vivoスクリーニングを行い、遺伝性心筋症や遺伝性伝導障害といった難治性心疾患の原因遺伝子を同定すること、さらには、有用な心疾患モデルマウスを確立し、難治性心疾患に対する新たな治療法の開発を目指すことを目的とした。使用する変異マウスは理化学研究所で開発された、化学変異原であるエチルニトロウレア(ENU)を使用した大規模かつ体系的な変異マウスライブラリーである。本研究期間内に変異マウスライブラリーの約1万匹のスクリーニングを行い、その中で心機能障害、心形態異常、刺激伝導系異常を呈するマウスを網羅的に同定する。ENUによるランダム変異を有する12週齢の第一世代(G1)マウスを週60匹ずつ理化学研究所バイオリソースセンターから筑波大学生命科学動物資源センターに搬入し、全身麻酔下で12誘導心電図および心臓超音波による心臓形態評価・心機能評価・電気生理学的評価を行った。また、小動物用心臓超音波であるVevo2100を使用し、傍胸骨左室長軸像および短軸像によって左室径、左房径、短縮率、駆出率、壁厚の計測を行った。平成23年度は、まず野生型マウス(ENU投与されていないマウス)100匹に対して行い、平均値±SDを決定した。次にENU投与第一世代マウスに対してスクリーニングを行い、現在までに約3000匹のスクリーニングを終了した。3SDを超える心筋壁肥厚、心内腔拡大、左室駆出率の低下を認める表現型陽性マウスがこれまでに22匹検出され、そのうち3匹について第二世代マウスを作成してスクリーニングを行ったが、遺伝性は確認できなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
変異マウスライブラリー約1万匹のうち、約3000匹のマウスの心スクリーニングが終了しており、当初の計画通りである。平成24・25年度も同様のペースで解析を進めれば、ライブラリーのほぼ100%をスクリーニングできるペースであることから、順調な進捗状況と考えられる。第二世代のスクリーニング・遺伝性テストは計画より1~2ヶ月の遅れがあるが問題なく進行しており、おおむね順調と考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度も引き続き週60匹・年間約3000匹を目標にスクリーニングを継続するとともに、表現型陽性個体が見出された場合、第二次スクリーニング・遺伝性テスト・および原因遺伝子の同定を進めていく予定である。第一次スクリーニングでは心電図による電気生理学的評価、および心エコーによる心機能・心形態評価によって行う。第一次スクリーニングで表現型陽性と判定されたマウスは第二世代を作成し、それらのマウスのスクリーニングも同様に行っていく。加えて、全身麻酔下にドブタミン(あるいはボスミン)負荷心エコーを行い、より詳細なスクリーニングを行っていく予定である。第二世代で表現型陽性の雄マウスを別系統のマウスと戻し交配して第三世代(G3)を作成し、第三次スクリーニングに進む。陽性の場合、DNAを抽出し、全染色体にわたり約20cM間隔で設置したマーカーを用いて、TaqMan法による高速SNPsマッピングを行う。その結果をもとに連鎖解析に基づいて責任遺伝子座を特定する。最終的にはダイレクトシークエンスにて原因遺伝子を同定する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度に予定していたマウスエコー用解析システムは既設の共通解析ソフトで代用できたため、予定していた約67万円は平成24年度に繰り越しとした。平成24年度は、次年度使用額と平成24年度申請額(直接経費)の80万円の約147万円の使用を予定している。平成24年度はリアルタイムPCR用試薬や吸入麻酔薬などの試薬類、チューブ類などの実験用品、戻し交配を行ったり、野生型マウスの表現型を解析するために必要な実験用動物など、消耗品として85万円を計上する。設備備品費としてマウス用レスピレーターの購入のため62万円を計上する。変異マウスライブラリー自体は理化学研究所との共同研究として搬入されるため、このライブラリー自体には研究経費が必要ない。またリアルタイムPCRやシークエンサー、小動物用心臓超音波装置などは既設の共通機器を使用する予定である。
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