本研究は、理化学研究所で開発された化学変異原であるエチルニトロウレア(ENU)を使用したランダム変異マウスに対し、心機能・形態・心臓刺激伝導能を指標に大規模ファワード・ジェネティック・スクリーニングを行い、遺伝性心筋症や遺伝性伝導障害といった難治性心疾患の原因遺伝子を同定すること、さらには、有用な心疾患モデルマウスを確立し、難治性心疾患に対する新たな治療法の開発を目指すことを目的として行った。 ランダム変異を有する12週齢の第一世代(G1)マウスを週60匹ずつ理化学研究所バイオリソースセンターから筑波大学生命科学動物資源センターに搬入し、全身麻酔下で12誘導心電図および心臓超音波による心臓形態評価・心機能評価・電気生理学的評価を行った。また、小動物用心臓超音波であるVevo2100を使用し、傍胸骨左室長軸像および短軸像によって左室径、左房径、短縮率、駆出率、壁厚の計測を行った。 平成23~25年度に約6800匹の第一世代スクリーニングを終了し、そのうち41匹について表現型陽性と判定(心肥大20、左室駆出率低下7、心肥大+左室駆出率低下11、心拡大1、心室性不整脈1、大動脈基部拡大1)した。それらのうち29匹について第二世代マウスを作成してスクリーニングを行ったところ、心肥大を呈する1系統および心室性不整脈を呈する1系統について遺伝性が確認された。そのうち遺伝性心室性不整脈マウスは多形性心室頻拍を呈し、SNPマッピングにより責任遺伝子座が同定された。現在、次世代シークエンスにより原因遺伝子の特定を行っており、平行して表現型の詳細な解析を行っている。
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