研究課題/領域番号 |
23659414
|
研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
木村 彰方 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 教授 (60161551)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
キーワード | 心筋症 / 不整脈 / Z帯 / 機能連関 / Naチャネル / ストレス反応 / ストレッチ反応 / ZASP |
研究概要 |
M21高発現マウスの伝導障害の発現と特徴ならびに生存率を詳細に検討したところ、軽度の性差を認めることが判明した。また、心筋における遺伝子発現を網羅的に検討し、M21高発現マウス心筋で特異的に発現が亢進もしくは低下する遺伝子群を同定した。これらには細胞内シグナル伝達に関与する遺伝子群やリン酸化制御に関わる遺伝子群が含まれていたが、一部は構造タンパクの遺伝子であった。また、ROCK阻害剤の投与による生存曲線の向上と心筋におけるリモデリング関連遺伝子発現の是正を見出した。一方、SLMAP変異を導入した細胞では、心筋Naチャネル(SCN5A)分子の細胞内局在異常が観察されるとともに、細胞表面への発現が阻害され、INa機能の低下が観察された。しかしながら、SLMAPは、正常型であるか変異型であるかを問わず、SCN5A、SCN1B、MOG1のいずれにも直接の結合は認めなかった。また、SLMAP変異の存在は、SCN5AとSCN1Bとの結合性には影響しなかった。これとは別に、不整脈患者にSCN3B変異を見出し、これを導入した細胞では、前述のSLMAP変異の場合と同様に、心筋Naチャネル分子の細胞内局在異常とINa機能の低下が観察された。これらはZASP変異によるINa機能障害と同様の所見であることから、心筋Naチャネルの機能維持にはZ帯複合体の形成が関わっており、SLMAP、ZASPが心筋Naチャネルと機能的に連関することを示唆した。一方、拡張型心筋症の病因となるBAG3変異を導入した心筋細胞では、ストレス反応としてのアポトーシスの亢進が観察されたが、それと同時にZ帯形成異常を認めた。また、MYPN変異が肥大型心筋症や拡張型心筋症などの多彩な病態をもたらすことを明らかにしたが、当該変異を導入した心筋細胞でもZ帯形成が障害されていた。これらは、Z帯機能が心臓機能全般の制御に関わることを示す。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書に記載した23年度計画は、(1) M21高発現マウスにおけるZ帯機能異常の検討、(2) Z帯構成要素によるチャネル機能修飾の検討、(3) Z帯要素とチャネル分子との結合性を修飾する低分子化合物の探索の3項目である。(3)に係る安定な形質転換細胞の樹立が確定していないが、いずれもほぼ計画どおり進行している。
|
今後の研究の推進方策 |
引き続き、Z帯機能異常に着目した心筋症および不整脈の病態形成機構の解明とその修飾戦略の開発を進める。疾患関連遺伝子を安定に発現する形質転換細胞の樹立が遅れているため、すでに導入細胞系を変更するなどの対応を行っており、今後の計画推進に大きな問題はない。
|
次年度の研究費の使用計画 |
計画した研究を遂行するための消耗品の購入費(物品費)を主体とし、成果発表のための国内旅費、謝金(研究補助者)、その他を計上する。
|