心筋症および不整脈の病因・病態形成におけるZ帯構成要素の機能連関に着目し、Z帯機能の構築と伝導機能維持の分子機序を解明するとともに、治療薬のシーズともなる機能修飾低分子化合物を探索することを目的とした。Z帯構成要素であるZASPの変異は拡張型心筋症と不整脈をもたらすが、不整脈発症メカニズムとして、ZASP変異特異的に心筋Naチャネル(SCN5A)の機能不全をもたらすことを明らかにした。また、T管やZ帯に分布するSLMAPの2つのミスセンス変異がBrugada症候群の原因となることを明らかにしたが、いずれの変異ともSCN5Aの細胞内輸送障害による機能不全を生じることを解明した。さらに、Brugada症候群患者にSCN3B変異を同定したが、この場合にもSCN5Aの細胞内輸送障害による機能不全を生じていた。一方、SCN5A、SCN3B、SLMAP、ZASP間の結合を検討したところ、SCN5AとSCN3Bは結合するが、SLMAPもZASPもSCN5Aとの直接の結合は認められず、マクロ複合体を構成することでSCN5A機能を制御すると考えられた。また、正常ないし変異SLMAPを導入したHEK細胞を用いて、SCN5Aの細胞内輸送障害機構を検討したところ、siRNAによってSLMAPの発現を抑制すると、変異の存在下にのみ細胞内輸送が是正された。一方、COP阻害剤、EDTA、熱処理などはSLMAP変異に起因する細胞内輸送障害を是正できなかった。これらとは別に、新規の心筋症原因遺伝子として多数のミオパラジン変異を同定し、その機能異常を解明した。さらに、M21トランスジェニックマウスではMYPT1のリン酸化が亢進していること、Rhoキナーゼ阻害剤の投与で病態が改善することを明らかにした。
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