研究課題
本研究は、幹細胞の分化速度を制御する新しい分子機構の解明を通して、外的シグナルからエピジェネティクス、遺伝子発現から分化速度制御に至る一連の細胞分化過程の新しい理解と「目的細胞への分化時間の短縮」という画期的技術開発を目的とする。1)分化速度制御機構におけるcAMP及びヒストン修飾分子(Y)の意義の検討2)cAMPによる分子(Y)制御機構の解明3)分子(Y)によるヒストン修飾の標的遺伝子の同定4)これら標的遺伝子による分化速度制御機構の解明これらの解析により、新しい分化速度制御機構の分子的本体に迫る先端的研究を推進することを試みた。i)PKAの活性化により、ES細胞から三胚葉の分化が約2倍早くなることを見出した。ii)PKA活性化により、ヒストンH3K9ジメチル化が亢進した。iii)PKA活性化により、Oct4, Nanogなど未分化遺伝子のH3K9メチル化と発現抑制が誘導された。iv)ヒストンH3K9メチル化酵素G9aの発現がPKA活性化により亢進した。v)G9a誘導性ノックアウトES細胞において、G9aを欠失させるとPKAによる分化促進作用は消失した。vi)G9aノックアウトマウスにおいて、胎生初期における細胞分化の遅延が認められた。vii)PKAがG9aを分解するユビキチンリガーゼAPC/C-cdh1の機能を阻害することにより、G9aの発現を促進していた。viii)アドレノメデュリン(AM)がPKAを活性化する内因性リガンドの一つとして作用しうることを示した。以上より、シグナル(AM-PKA)からエピゲノム制御(G9a-ヒストンメチル化)、遺伝子発現制御(Oct4, nanog発現抑制)を介して細胞のふるまい(早期分化)に至る分化速度制御機構の全貌を明らかにすることに成功し報告した(Cell Stem Cell in nress)
すべて 2012 2011 その他
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件) 学会発表 (26件) 図書 (1件) 備考 (1件) 産業財産権 (1件) (うち外国 1件)
Stem Cells
巻: 30 ページ: 687-696
DOI:10.1002/stem.1041.
巻: (in press)(Epub ahead of print)
10.1002/stem.1089.
Br J Cancer
巻: 106 ページ: 1148-1152
10.1038/bjc.2011.574 Epub2012Feb16
PLoS One
巻: 6 ページ: e23657
10.1371/journal.pone.0023657
Blood(表紙)
巻: 118 ページ: 775-785
10.1182/blood-2010-09-306001
Cell Stem Cell
巻: (in press)
http://maxim2.frontier.kyoto-u.ac.jp/es02/