研究概要 |
劇症型心筋炎を呈する巨細胞性心筋炎の平均生存期間は4-12カ月であり、極めて予後不良である。生存率改善のためには、早期診断による早期治療の開始が必要である。しかし、現状では、臨床症状、身体的所見、血液生化学検査、胸部レントゲン、心電図、心エコー図などの非特異的所見による総合的診断が行われており、心筋炎特異的診断方法は存在しない。心内膜心筋生検もサンプリング・エラーが大きいため信頼性がない。実地臨床現場では、劇症型心筋炎の診断や治療に対する"unmet needs"が存在する。本事業では、心臓超音波検査を用いて、静脈内薬剤投与により、劇症型心筋炎の診断をベッドサイドでおこなう技術を開発した。本診断法は、劇症型心筋炎に特異的な病態を利用したものであり、心筋炎に対する初の特異的診断法につながる。同時に、劇症型心筋炎に対する新規治療方法の開発をおこなった。免疫抑制剤の劇症型心筋炎に対する効果は一定ではないが、根治療法が存在しない現状では,難治症例での使用は是認されているのが現状である。申請者らは、免疫抑制剤を用いたドラッグデリバリーシステムを新たに開発することにより、ミオシン感作により作製した劇症型心筋炎ラットモデルにおける左室拡張末期圧上昇を抑制するなどの効果を見出し、心筋炎に伴う心機能低下を抑制することに成功した。アカデミアにおいてGMP基準に対応した免疫抑制剤を作製し、早期探索的試験実施に向けて基礎実験成果を得た。(601文字)
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