研究課題/領域番号 |
23659419
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
王 英正 岡山大学, 大学病院, 教授 (50372579)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | ヘテロカリオン / 心筋分化 / 心臓内幹細胞 / 細胞融合 / 心筋細胞 |
研究概要 |
(背景)ヒト胚性幹(ES)細胞とヒト皮膚線維芽細胞をポリエチレングリコール(PEG)処理下で共培養すると、細胞間融合を介して、ヒト皮膚線維芽細胞はES細胞に形質変換される。融合した細胞には、同数体の染色体をもった核融合細胞と両者の染色体が混合した形態を示すヘテロカリオン細胞の2種類に分けられる。ヘテロカリオン細胞の特徴は細胞分裂を伴わず、同数体のモザイク染色体をもち、分裂能力のあるハイブリッド細胞とは異なる。この現象は、細胞間融合後も、元細胞の染色体情報をそれぞれ読みだすことが可能となり、細胞の形質変換を司る重要な規定因子群の同定に極めて有用である。(目的)自己再生能が極めて高いzebrafishの心臓は単心室の形態を示すが、これまでに哺乳類で有用な単心室モデルは存在しなかった。ヒトヘテロカリオン細胞及び単心室症心筋細胞特有の遺伝子群を網羅的に解析し、新たなヒト心筋細胞分化誘導因子群を同定する。また、本開発技術をヒト心臓内細胞に応用しヒト心筋再プログラム化を試みる。 (方法)特定諸因子群による線維芽細胞の人工多能性幹(iPS)細胞及び人工マウス心筋細胞への直接再プログラム化が報告された。しかし、ヒト心臓内細胞を人工的に心筋細胞に分化誘導する遺伝子群は不明である。細胞と細胞が融合すると新たに形成された細胞は、2種類の染色体情報をもったヘテロカリオン細胞となる。本研究では、ヒト心臓内幹細胞とマウス心筋細胞の細胞融合を介した異種間ヘテロカリオン細胞を樹立し、ヘテロカリオンを示す融合心筋細胞のヒト遺伝子情報の読み出しすることで心筋誘導因子群を同定する。(意義)ヒト心筋細胞誘導法はいまだ不明であり、特定因子群による心筋細胞へ特化した分化制御法の開発により、あらゆる不全心筋疾患へ臨床応用できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヒト心臓内幹細胞とマウス心筋細胞用いたヘテロカリオン細胞の樹立に関しては、効率よくヒト細胞をマウスの形質に変換させるために、ヒト:マウスの混合細胞比を1:3より開始し、ヒト心筋細胞の形成率を全細胞の1%以上となるまで調節する。ヘテロカリオン細胞の純化法は、ヒト心臓内幹細胞をPGK-mcherryそしてマウス心筋細胞をPGK-eGFPでそれぞれ標識、共培養後PEG処理しに二重陽性細胞をソーティングすることに成功した。
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今後の研究の推進方策 |
PEG処理したヘテロカリオン細胞のヒト遺伝子情報は、心筋細胞の形質獲得に必須で最小限の遺伝子変化プロファイルを強く示唆する。このことは、候補因子群のsiRNAをヘテロカリオン細胞内に導入し、心筋分化誘導効率を心筋特異的alpha-MHCのプロモーター解析を行うことで、必須不可欠因子群の絞り込みができ、最終候補因子群をヒト心臓内幹細胞に導入する。
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次年度の研究費の使用計画 |
人工ヒト心筋細胞を可視化するために、ヒト心筋とロポニン-Iプロモーターで制御されているRFPリポーター遺伝子をpuromycinカセットに連結し、心筋誘導されたクローンを可視化かつ選択できるようにする。導入した転写因子群のプロモーター特異的ChiP PCR arrayを行い、細胞形質変換時でのヒストン修飾と核内蛋白の結合状況を解析する。
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