研究課題/領域番号 |
23659421
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
砂川 賢二 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (50163043)
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研究分担者 |
市来 俊弘 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (80311843)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 低酸素応答系 / prolyl hydroxylase / アンジオテンシンII受容体 / 細胞肥大 / 線維化 / hypoxia-inducible factor |
研究概要 |
【研究の背景と目的】脂肪組織や血管における炎症が、肥満に伴うメタボリック症候群や動脈硬化病変の形成に重要な役割を果たす。低酸素状態で活性化されるhypoxia-inducible factor(HIF)と呼ばれる転写因子は、正常酸素状態ではprolyl hydroxylase (PHD)蛋白により分解へ誘導される。低酸素状態になるとPHDが阻害される結果HIFが活性化され、低酸素に拮抗するための様々な分子の発現を誘導する。本研究では、レニン・アンジオテンシン系に対するPHD阻害の影響をアンジオテンシン(Ang)IIタイプ1受容体(AT1R)の発現や機能などに着目して解析した。【結果】PHDの阻害薬であるコバルトの投与あるいは低酸素(1%02)への暴露は,培養平滑筋細胞のAT1Rの発現を抑制した。PHDの主要なアイソフォームであるPHD2をsiRNAによりノックダウンしても同様にAT1Rの発現が抑制された。しかしHIFの過剰発現はAT1Rの発現には影響を与えなかった。PHD阻害はAT1R遺伝子のプロモーター活性とmRNA安定性の両方を減少させた。コバルトによる前処置は平滑筋細胞においてAngIIによるERKの活性化、細胞肥大を抑制した。マウスにコバルトを飲水投与すると,大動脈におけるAT1Rの発現が低下された。コバルトの投与は4週間のAngII投与により生じる冠動脈周囲の線維化を抑制した。【考察】PHDの阻害がAT1Rの発現を抑制する事を明らかにした。このAT1Rの発現抑制により、AngIIにより誘導される細胞内シグナルの活性化、平滑筋細胞の肥大、血管周囲の線維化などが抑制されたと考えられた。AngIIは心不全や動脈硬化などの進展に重要な役割を果たしていることから、PHDの阻害は心血管病の新たな治療戦略となる可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
prolyl hydroxylase domain蛋白の阻害がアンジオテンシンII受容体の発現調節に関わることを平成23年度に報告できた。現在prolyl hydroxylase domain蛋白2を脂肪細胞およびマクロファージ特異的にノックアウトしたマウスの作成に成功している。このマウスの解析により今後prolyl hydroxylase domain蛋白2の機能に関して新たな知見が得られると期待されるので、研究は概ね順調に進展していると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
prolyl hydroxylase domain蛋白2を脂肪細胞およびマクロファージ特異的にノックアウトしたマウスが作成できたので、表現型の解析を行う。動脈硬化モデルマウスとの交配を行い、動脈硬化病変の形成におけるprolyl hydroxylase domain蛋白2の役割を明らかにする。また、これらのマウスに高脂肪食を負荷し、糖・脂質代謝におけるprolyl hydroxylase domain蛋白2の役割を解析する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
組織の免疫染色、定量的PCR、ウエスタンブロットに必要な試薬、抗体等を購入する。血中のサイトカイン、インスリン等を測定するアッセイキットを購入する。アッセイに必要なプラスチックチューブ、ピペットチップなどを購入する。研究成果の発表のための旅費を支払う。
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