TGFβスーパーファミリーの受容体ALK1はリガンドBMP9/10刺激を受け、血管形成や血管成熟に重要な役割を持つ。またヒトにおいてALK1は遺伝性出血性毛細血管性拡張症や肺高血圧などの循環器疾患の原因遺伝子としても知られている。しかし、それらのシグナルの下流で機能する遺伝子は不明な点が多い。我々は本研究で遺伝子XがALK1/BMPR2複合受容体の下流で機能し、血管新生や血管の成熟化に働く重要な遺伝子であることを遺伝子X欠損(KO)マウスを用いて証明した。それら遺伝子X KOマウスは血管形成異常で胎生致死した。KOマウスの血管形成異常の表現型の一因として動脈形成に重要とされるNotch活性やAKTのリン酸化が障害されていることを見出した。遺伝子XはALK1/BMPR2シグナルの下流で血管発生に重要な遺伝子であることを証明した。 次に遺伝子Xと肺高血圧の関連を調べるため、遺伝子Xの薬剤誘導型コンディショナルKO(cKO)マウスを作製した。現在のところ通常酸素化の飼育ではcKOマウス肺で軽度の筋性動脈の肥厚を認めるのみであり、明らかな肺高血圧は誘発されていない。今後は環境要因を変化させることが必要である。
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