研究課題/領域番号 |
23659427
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
久保 裕司 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (20332504)
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研究分担者 |
不破 春彦 東北大学, 生命科学研究科, 准教授 (90359638)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 癌 / 薬学 / 薬剤反応性 / 薬理学 / シグナル伝達 / マイクロアレイ / トランスレーショナルリサーチ |
研究概要 |
海綿由来天然化合物exiguolideを人工合成法し,新たな抗癌剤を開発することが本研究の目的である.平成23年度は,次の2点について研究を行った.1.培養癌細胞系およびin vivo動物モデルを用いたexiguolide抗腫瘍効果の検証 培養肺癌細胞のH460(大細胞肺癌)とA549(肺腺癌)にexiguolideを作用させ,細胞増殖抑制効果を確認した.その結果,極めて低濃度でexiguolideは癌細胞増殖抑制を示すことが明らかとなった.同時に,培養非癌細胞への影響を線維芽細胞および血管内皮細胞で確認した.これら非癌細胞においては,exiguolideの増殖抑制作用は,軽微であった.この結果は,将来的な臨床応用に大変重要である.in vivo動物モデルは,ヌードマウス皮下に培養癌細胞(H460またはA549)を移植し,exiguolide腹腔内投与による腫瘍増殖の変化を確認した.その結果,in vivoにおいても,exiguolideは極めて低濃度で抗腫瘍効果を示すことが明らかとなった.また,exiguolideの生体毒性は低かった.2.exiguolide抗腫瘍メカニズムの解明 培養癌細胞の解析より,exiguolideの増殖抑制作用の一部は,細胞周期への作用であることが明らかとなった.exiguolideは天然由来化合物であるため,多くの作用点を持つと考えられた.そこで,exiguolide抗腫瘍メカニズムを網羅的に解析するため,培養癌細胞(H460またはA549)にexiguolideを作用させ,系時的な遺伝子発現変化をマイクロアレイで解析した.その結果,PKCとAktの2点に作用して抗腫瘍効果をもたらしていることが明らかになり,現在その詳細を検討中である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り,exiguolideの抗腫瘍効果を培養癌細胞系とヌードマウスを用いたin vivoの系で確認することができた.平成24年度は,この同じ系を用いて,exiguolide構造類縁体の効果を確認することが目的であるため,計画通り研究は進展している.
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は,exiguolideより毒性が少なく,高い抗腫瘍効果を示す構造類縁体を合成することが目的である.平成23年度の抗腫瘍メカニズム解明研究をさらに推進させ,exiguolideの作用点を明確にする.その結果を基に,様々な化学修飾を加えた構造類縁体の分子設計・化学合成を行い,それらの抗腫瘍効果スクリーニングを平成23年度に確立した培養癌細胞系およびヌードマウスを用いたin vivoの系で行う.また,天然exiguolideは脂溶性であるため,水溶性構造類縁体の合成も行い,臨床応用を目指した研究を推進する. 明らかになった抗腫瘍メカニズムを元に,それらの変化を臨床検体で確認し,将来のexiguolide個別化医療の基礎を築く.研究は,東北大学医学部倫理委員会の承認を受け,同意が得られた病理検体を用いてPCR,免疫染色等によって解析を行う.
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度同様,培養癌細胞系およびヌードマウスを用いたin vivoの系において,構造類縁体の抗腫瘍効果を検討する.そのため,細胞培養試薬とマウスの購入に研究費を使用する.また, exiguolide抗腫瘍メカニズムをWestern blot法で確認するため,リン酸化Aktなどに対する抗体を購入する.これらの研究成果を論文として発表するため,その論文投稿料および印刷費を計上する.
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