研究課題
DA-Rafノックアウト(KO)マウスを用いて肺胞形成分子機構について解析を行った。DA-Raf KOマウスの肺胞形成は生後2日目(P2)までは野生型と差は認められないが、生後5日目(P5)以降肺胞腔の拡張が顕著となり肺気腫状となる。DA-Rafは2型肺胞上皮細胞に発現が認められることより肺胞形成期の肺胞上皮細胞の増殖及び細胞死について解析を行った。その結果KOマウスにおいてはBrdU陽性の増殖細胞の数が野生型に比較して減少していた。また細胞死についてTUNEL法および活性型caspase3染色にて解析したところ野生型及びKOの間に差は認められなかった。さらに肺胞形成期における筋繊維芽細胞の数についてもKOマウスにおいて著明に減少していた。Ras/Raf/MEK/ERKカスケードについて解析したところKOではMEKリン酸化が恒常的に維持されていたのに対し、野生型では2~5日をピークとして減少し肺胞形成の進行とともに不活性化された。これらの結果よりDA-Rafは2型肺胞上皮細胞の分化・増殖を制御することにより肺胞形成期に機能していると考えられる。 次に2型肺胞上皮細胞株RLE-6TNを用いてDA-Rafによる肺胞細胞分化の分子機構について解析を行った。RLE-6TN細胞はTGFbの刺激により筋繊維芽細胞へと上皮間充織転換(EMT)することが知られている。DA-RafをノックダウンしたRLE-6TN細胞をTGFbで刺激するとEMTが抑制されることが明かとなった。さらにMEK阻害剤であるU0126を添加するとEMT抑制から回復した。これらの結果よりDA-RafはRas/Raf/MEK/ERKカスケードを抑制することにより2型肺胞上皮細胞から筋繊維芽細胞への分化を促進し、新生児期の肺胞形成、特にsecondary septumの形成を制御していると考えられる。
2: おおむね順調に進展している
当初計画通り肺胞形成におけるDA-Rafの役割についてKOマウスおよび培養細胞を用いて分子機構を明らかにできた。当初初代培養による共培養系を用いて検討する予定であったが分化誘導可能な細胞株が入手できたことにより解析が容易となった。しかし今後共培養系も重要であるためさらに改良を加え安定したものとしていきたい。 また、当初計画していたマイクロアレーによる解析、病態モデルの作製と解析についても順調に進んでいる。
今後は慢性閉塞生肺疾患の病態モデル解析を中心に行いDA-Rafがこれら疾患治療のうえでの標的分子となりうるのか、またDA-Raf発現を制御する方法の開発を中心に解析をすすめていく。また肺胞形成の分子機構についてはSPC-GFPマウス、SPC-CreERノックインマウスを用いることによりより詳細な解析をすすめる予定である。
消耗品として化学薬品、抗体、プライマー等に使用する。またマウスを用いた研究が中心となるため、マウス購入、管理、新たな遺伝子組換えマウス作製(当研究室で作製可能)などの費用を計上する。
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10.1111/j.1365-2222.2011.03836