研究課題/領域番号 |
23659430
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
山本 博 金沢大学, 医学系, 教授 (00115198)
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研究分担者 |
渡辺 琢夫 金沢大学, 医学系, 准教授 (40303268)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | RAGE / A594 / BEAS-2B / 定量的RT-PCR |
研究概要 |
本年度は、研究計画に従い、肺胞細胞上皮のin vitroでのRAGEの発現とその制御機構にアプローチするため、材料となる肺組織由来の不死化培養細胞株の解析を行った。肺は他の臓器に比べて圧倒的にRAGEの発現が高い臓器であり、また、膜型RAGEと分泌型RAGEという2つのスプライシング・バリアントの比については、血管内皮などに比べて膜型RAGEの占める割合が高いことがすでに明らかにされている。 そこで、今回、II型肺胞上皮細胞由来のヒト肺腺がん由来細胞株であるA549、および、ヒト気管上皮細胞にSV-40ウイルスを感染させることによって不死化した細胞株であるBEAS-2Bについて、RAGEの発現パターンを2つのスプライシング・バリアントごとに検討した。具体的には、我々の研究室で確立した定量的RT-PCRの系を用いて、それぞれの細胞株から抽出したトータルRNA中における膜型RAGEと分泌型RAGEに対応するmRNAのコピー数を測定した。対照として、ヒト血管内皮初代培養株であるHMVEC、および血管内皮の性質を残すがん細胞株であるECVを同様の方法で解析した。 その結果、A594、BEAS-2BにおけるRAGE mRNAの発現量はいずれも予想されたほど高くはなく、HMVECよりは高い値を示したものの、ECVとは同程度であった。また、膜型RAGEと分泌型RAGEの比についても、膜型が優位ではあったが、膜型/分泌型の比はECVと明らかな差を認められなかった。すなわち、肺由来細胞として期待されたRAGEの高発現、高い膜型/分泌型比という特性は認められなかった。培養密度を変えるなどして再検討も行ったが、同様の結果が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
肺由来細胞株であるA594もしくはBEAS-2Bのいずれかが肺組織で見られるRAGEの高発現、高い膜型/分泌型比という特性を示すことを期待していたが、慎重な検討の結果、期待されたような特徴的な発現パターンを示さず、これらの培養細胞株が、肺胞のin vitro モデル系として最適ではない可能性が示されたため。
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今後の研究の推進方策 |
肺細胞由来の細胞株として、本年度に検討した不死化細胞株は肺組織に特徴的なRAGE発現パターンを示さなかったため、肺胞上皮細胞初代培養細胞株を購入し、そのRAGE発現パターンを解析する。また、ニコチンなどの喫煙刺激に対するRAGE発現パターンの変化は、必ずしも肺組織に特徴的なRAGE発現パターンを示す細胞でなくても解析が可能であるため、次善の策としてA594もしくはBEAS-2Bを用いて検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
上記の(今後の推進方策)に記載したとおり、新たな細胞株の購入と解析、および既に保有している細胞株の新たな実験系での解析を行うため、細胞株の購入費用、細胞培養および解析に用いる試薬・器具の経費として用いる。
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