COPDにおいては MMP等の肺プロテアーゼの活性亢進が病態に関与している。そこでRAGEがCOPDの病態において果たしている役割を検討するため、本年度はRAGEシグナリングとMMP活性の関連を解析した。 1. cAMP依存性シグナルによるRAGEシグナルの抑制 (1)RAGEリガンドのマウスマクロファージ培養液中への添加により、MCP-1の分泌亢進が見られた。この分泌亢進はRAGE欠失マウスのマクロファージでは見られないことから、RAGEを介するシグナルによるものであると考えられた。(2)上記のRAGEシグナル依存性MCP-1分泌亢進は、アデニル酸シクラーゼ賦活薬であるフォルスコリンおよびcAMPアナログである8-bromo-cAMPによって抑制された。このことから、cAMP依存性シグナルはRAGEシグナルを抑制すると考えられた。 2. RAGEシグナル抑制へのMMP9の関与 (3)RAGEリガンドのマウスマクロファージ培養液中への添加により、シグナル伝達に関わる膜型RAGEの増加が見られたが、この増加はフォルスコリンの添加によって抑制された。(4)RAGEリガンドとフォルスコリンの同時添加により、マクロファージ培養液中で、デコイ受容体として働く可溶型RAGEの増加が見られた。(5)上記(3)および(4)のフォルスコリンの効果はMMP阻害剤によって抑制された。また、フォルスコリンによるマクロファージのMMP9活性化が認められた。これらのことから、cAMP依存性に活性化されたMMP9により、膜型RAGEがシェディングを受けていると考えられた。以上のことから、cAMP依存性のシグナルは、MMP9を活性化し膜型RAGEのシェディングを促進することにより、RAGEシグナルを抑制することが示唆された。研究期間を通じて、上記成果と肺胞上皮系細胞株のRAGE発現パターンに関する成果を得た。
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