研究課題/領域番号 |
23659431
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
長谷川 好規 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (20270986)
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研究分担者 |
橋本 直純 名古屋大学, 医学部附属病院, 助教 (30378020)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | EMT / 肺構成細胞 / 再生医療 / 低酸素 / 肺傷害 |
研究概要 |
我々は肺構成細胞の再生治療を構築するために、上皮間葉系移行(EMT)誘導およびその復元メカニズムとされる間葉系上皮移行(MET)の機序を解明することを計画した。そのために、誘導因子となる組織微小環境に着目した。その中で低酸素状態はtwist誘導を介したEMT誘導因子であることが報告されていたため、Endothelial-mesenchymal transition (Endothelial-MT)を介した血管内皮由来肺線維芽細胞の線維化病変形成への関与が線維化病変に低酸素状態をもたらすことによってEMT形成を引き起こすとする仮説に基づき、twistによる肺癌細胞におけるEMT誘導効果を検討することにより、2011年Mol Carcinogに仮説を実証して報告した(2012 vol51 p400-410 doi: 10.1002/mc.20802.)。さらに、肺傷害において組織障害部位に遷延化低酸素状態が存在することを明らかにしたうえで、肺傷害における遷延化低酸素状態の上皮細胞の機能変化を評価するために、肺上皮細胞を急性低酸素状態および遷延化低酸素状態に暴露した。その結果、肺上皮細胞機能のひとつとされるサーファクタントD蛋白(SP-D)は急性低酸素において産生亢進し、遷延化低酸素でEMTに合致するSP-D抑制を示した。これらの知見を2012年Am J Physiology-Lungに報告した(2012 In press)。低酸素状態での肺上皮細胞の機能変化を知ることは肺再生治療の戦略を達成させるためには極めて重要な情報をもたらすものであり、現在低酸素状態で安定化発現するHIF1αおよびHIF2αの薬剤調節型遺伝子発現安定肺上皮細胞を樹立してその影響を詳細に検討する計画である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
遷延化低酸素刺激は幹細胞における再生能に極めて重要な役割を果たすことが報告されている(Cell Stem Cell, 2009 vol5, p1)。我々は、肺傷害における遷延化低酸素刺激の影響に着目して詳細に検討してきたが、肺上皮再生機序においても遷延化低酸素刺激が重要な因子になると考えている。これまでの研究期間内に、twistによるEMT誘導効果を検討することにより、2011年Mol Carcinogに仮説を実証して報告した(2012 vol51 p400-410 doi: 10.1002/mc.20802.)。また、遷延化低酸素でEMTに合致するSP-D抑制について、 2012年Am J Physiology-Lungに報告しており(2012 In press)、期間内に研究計画を概ね達成していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
我々は肺再生をもたらす微小環境の役割を詳細に検討するために、薬剤誘導調節型遺伝子発現システムを用いて、HIF1αおよびHIF2αなどの発現による幹細胞誘導、および、EMT発現誘導のメカニズムを明らかにしようと試みている。また、PTEN分子がEMT誘導を適切に制御するための分子機序の解明を開始している。これらから得られる知見は肺再生を適切に制御する上で重要な知見となると考えており、薬剤調節型PTEN発現安定型肺上皮細胞の樹立を進めている。これらの細胞を用いて遷延化低酸素暴露刺激でのPTEN制御効果を検討するとともに、すでに作成が完了している幹細胞誘導遺伝子発現細胞株を用いて、HIF1α, HIF2α, PTEN遺伝子などの影響を検討することで肺上皮再生を調節する機序を解明する計画である。
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次年度の研究費の使用計画 |
肺再生メカニズムをin vivo modelで証明するために、ウイルス発現ベクターおよび関連遺伝子改変マウスを作成もしくは購入する予定である。
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