研究課題
岡山大学地球物質科学研究センターの中村栄三教授らは,微量元素パターンの解析で悪性中皮腫患者の肺から分離したフェリチンからなる含鉄蛋白質小体に環境生態系より高い濃度のラジウムを検出している。生体内にラジウム吸着によるホットスポットが形成され,そこから発せられる長期間のα線により,細胞傷害あるいはDNA損傷を介して発癌を引き起こしている,すなわち“ラジウムの生体内被曝による癌化”という斬新で独創的な仮説を提唱している。本研究はこの仮説を検証するために動物実験を計画した。ラットを使用し,腹腔内に長期に鉄剤を注射することにより腹膜中皮腫を形成させ,自然界に存在すラジウムが腹膜中皮腫の含鉄小体に集積しホットスポットを形成するか否かを地球物理化学的・免疫組織学的・分子生物学的に検証する目的で、3週齢の健常雄性Slc: Wistarラットを購入し,7日間の馴化終了後,各群の体重平均値および標準偏差がほぼ等しくなるように,第1群2匹,第2群2匹,第3群14匹の計3群に群分けされ,第1群 媒体のみ,第2群 媒体およびNTA:83.5 mg/kg 20週間,第3群 媒体およびNTA:83.5 mg/kg 20週間,フェジン:5 mg/kg12週間の腹腔内1日1回,週5回の反復投与後,ラットを解剖した。第1群,第2群に腫瘍は認めなかったが,第3群では10匹中5匹で悪性腹膜中皮腫を確認した。HE染色で上皮型中皮腫,免疫染色でカルレチニン陽性,CEA陰性,8-OHdG (酸化損傷のマーカー)であり,腫瘍を凍結乾燥させ主要評価項目プリミティブマントル正規化微量原素パターンの解析に入っている。
すべて 2012
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Cancer Sci
巻: 103 ページ: 510-4
doi:10.1111/j.1349-7006.2011.02180.x.