研究課題/領域番号 |
23659434
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
西岡 安彦 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 教授 (70274199)
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研究分担者 |
岸 潤 徳島大学, 大学病院, 助教 (20437635)
東 桃代 徳島大学, 大学病院, 特任助教 (10403750)
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キーワード | 肺線維症 / ペプチド / 吸入療法 / PDGF / 医療・福祉 |
研究概要 |
これまでの検討から肺線維症におけるPDGFシグナルの阻害にはPDGF-BB/PDGFR-β受容体経路の阻害が有用であることを確認している。そこで、PDGF-BBとPDGFR-β受容体の結合阻害活性を持つペプチドをAHB(antigen homology box)モチーフの推定法(Nat Med.1:894-901,1995)を用いて、コンピューター下に20 種類設計し合成した。In vitro においてマウス肺線維芽細胞の増殖抑制活性を3H-チミジンの取り込み試験にてスクリーニングしたところ、20 種類のペプチドの中で一つのペプチド(ペプチドX)に、肺線維芽細胞増殖抑制活性を確認した。本ペプチドは、PDGF-AA、FGF-2、IGF による増殖に対しても弱いながら抑制活性を示した。またBIACORE X を用いた表面プラズモン共鳴によるPDGF 阻害ペプチドのマウスPDGF Rβ-Fc との特異結合の検討を行った。その結果、ペプチドX はPDGF Rb-Rβ-Fc と結合することが示唆された。 一方、ペプチドX の抗線維化効果についてマウスブレオマイシン肺線維症モデルを用いて検討した。C57BL/6 マウスにブレオマイシン(BLM)125mg/kg をosmotic minipump を用いて持続皮下投与(7日間)することで肺線維症モデルを作成した。まずペプチドX100μgをday18から10日間腹腔内に投与し抗線維化効果を検討した。しかしながら、ペプチドX の腹腔内投与では、抗線維化効果は確認できなかった。一方、同じスケジュールでペプチドX を気管内投与し、抗線維化効果を検討した。その結果、ペプチドX の気管内投与によって、マウスBLM 肺線維症における肺線維化が抑制された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の目的は、肺線維症に対して抗線維化効果のあるペプチドをスクリーニングし、医薬品としての可能性を検討することにある。まずマウスPDGF-BB分子とマウスPDGFR-β受容体の結合を阻害するという機能をもとにAHB(antigen homology box)の推定法(Nat Med1:894-901,1995)を用いて、コンピューター下に20 種類のペプチドシークエンスを決定し、合成した。最初のスクリーニング法として、マウス肺線維芽細胞の増殖試験を用いてペプチドのスクリーニングを行った。その結果、1 種類のペプチド(ペプチドX)に線維芽細胞の増殖抑制活性を確認した。そこで、マウスBLM肺線維症モデルを用いて、ペプチドXの抗線維化効果を確認したところ、ペプチドの気管内投与により、抗線維化効果が確認された。以上から、当初の目的であった抗線維化効果を持つペプチドをスクリーニングすることに成功した。しかし、同時にいくつかの問題点が判明した。一つ目の問題点は、合成したペプチドのPDGFR-β受容体への結合の特異性が低いという点である。また、in vivoの抗線維化効果が予想より弱い点についても改善の必要性がある。
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今後の研究の推進方策 |
当初予定している平成25 年度の研究計画は以下のとおりである。 (1) ブロッキングペプチドによるin vivo での抗線維化効果増強の試み(研究分担者:東 桃代) (2) ブロッキングペプチドの構造解析とより有効なペプチドへの改変の検討(研究分担者:岸 潤) (3) ヒトPDGF-PDGF レセプター結合阻害ペプチドの設計(研究代表者:西岡安彦) 平成25年度にもin vitro の実験系にて今回同定した抗線維化ペプチドX の作用メカニズムについて詳細な検討を進める。具体的には、ペプチドX の作用について各種増殖因子受容体のシグナル伝達抑制効果をwestern blotting にて検討を行う。さらに、in vivo における抗線維化効果増強のため、他の治療法との併用療法を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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