研究課題
2007年~2010年に集積した、肺癌手術例のうち、軽微な肺線維化病変を持つ7例、年齢・性別・喫煙歴等を合致させた正常肺症例19例を抽出し、32,000の遺伝子についてのデータを解析し、2群間で発現の差がある25の遺伝子を選別した。これらの遺伝子の中には、OsteopontinやCaveolin-1など、既にIPF病態との関連が報告されている複数の遺伝子が含まれていた。これらの遺伝子について文献的考察を行い、IPF病態への関与が考えられる複数の遺伝子を選別した。その中で最も可能性の高いと考えられたMKD(NM002391)に着目し、以後の研究を遂行した。MDK(NM002391)はmidkine(MK)をコードする遺伝子である。MKは塩基性の低分子蛋白質で、細胞の増殖、生存、遊走等の生物活性を持つ。炎症性疾患での組織障害の修復過程で強く発現することが知られている。このため、ELISA法により、健常者、IPF患者、その他の間質性肺疾患患者の血清ならびにBAL液中のMK濃度を測定した。MKはIPF患者血清では健常者と比較して有意に増加していた。また、IPF患者BAL液中のMKは、BAL液中の炎症細胞比率と有意な相関関係を認めた。次に、MKの間質性肺炎への関与メカニズムを解明するため、Wild type(WT)マウス(C57BL/6J)とMK-KOマウスを用い,、Bleomycine(BLM)気管内投与による間質性肺炎モデルを用いた検討を行った。WTマウス肺組織では、BLM投与早期(3日目)と後期(14、21日)でMK mRNAの有意な増加が認められた。また、ヒト肺線維芽細胞(WI-38)をTGF-βで刺激すると、3時間でMK mRNAの発現増強がみられた。また、MK-KOマウスでは、BLM投与後のBAL液中の蛋白濃度とリンパ球比率が有意に低下し、TNF-αの発現も有意に低下していた。これらの結果から、MKはBLM肺障害を抑制する可能性が示唆された。以上の結果から、MKはIPF病態の重要な修飾因子であることが示唆された。
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