本研究の目的は、血管形成異常患者における、特定遺伝子配列の包括的検索を行う事である。対象疾患患者検体を用いて全エクソンリシークエンシングによる責任遺伝子の検索を行った。次世代シークエンサーを用いた解析は、膨大なデータが得られる事により、標的因子の絞り込みが困難であると予想される。本研究では、ターゲット遺伝子群として、約100個のTGF-β関連遺伝子群を候補とする事で、絞り込みの効率性を重視しかつ責任遺伝子を同定する事を目的としてる。 本研究にあたり、プロトコールについて埼玉医科大学倫理委員会にて審査承認済みである。同意が得られた患者検体の収集を行っている。また、全エクソンリシークエンスを行うに当り、ゲノム情報という個人情報の問題が考えられる。本研究では、個人情報保護と いう観点から候補遺伝子群以外の遺伝子情報を含めたゲノム情報については取り扱わず、候補遺伝子群のみの情報から責任遺伝子の探索および評価を行った。 得られた解析データ1検体分を同検体の解析データを用い特定遺伝子群に関して探索を行った。その結果、候補遺伝子として十数個の遺伝子に絞り込む事が出来た。そのうち、TGF-β関連遺伝子内の2つの遺伝子に、アミノ酸置換を伴う塩基置換が存在する事が解った。 同アミノ酸置換に伴う塩基置換による、疾患への影響等を明らかにする為に、今後はその候補遺伝子に対して、詳細な解析を行うことで生物学的意義を明らかにし、疾患関連遺伝子として同定する必要性が有ると考えられる。また、引き続き検体収集を行い、検体が得られ次第全エクソンリシークエンス解析を行う予定である。
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