研究課題
本研究の目的は、(1)ポドサイトが増殖能を喪失する機序を解明すること.(2)ポドサイトの分化・成熟機構を解明すること.(3)ポドサイトの前駆細胞と考えられる血管極直近のボウマン嚢上皮細胞をポドサイトに分化誘導させる方法を開発し、ポドサイトを再生させることにより、糸球体機能を回復させる方法を開発することである。平成23年度は、「ポドサイトの分化・成熟機構の解明」を中心に研究を進めた。 未分化型培養ポドサイト、分化型培養ポドサイトからmRNAを抽出し、subtracton, differntial display法、並びに次世代シーケンサを用いた解析により遺伝子プロファイリングを行った。また、ポドサイトの特徴的な分化構造である足突起の維持に関わる遺伝子群を同定するため、正常ラット糸球体材料、ポドサイトの足突起が消失している病態モデルラットの糸球体からmRNAを抽出し、次世代シーケンサを用いて遺伝子プロファイリングを行った。一連の検討で、ポドサイトの分化構造の形成、維持に関わる分子として細胞膜蛋白、細胞間接着装置関連分子など20余種の分子を同定した。その中で特に重要と考えられた分子については、局在、スリット膜構成分子との結合性の有無についての検討を行った。また、これら分子のポドサイト分化における役割を検討するため、siRNAを用いた機能解析を行った。胎生15.5日齢ラットから摘出した後腎原器による器官培養系を用いて分化過程での発現様式の解析を進めた。一連の検討でAdhernce junction関連分子の発現低下がポドサイトの成熟分化に重要であると考えられた。
2: おおむね順調に進展している
平成23年度は「ポドサイトの分化・成熟機構の解明」を中心に研究を進めた。未分化ポドサイト、分化型ポドサイトの遺伝子プロファイリングを行った。また、分化構造を持つポドサイトと分化構造を消失した細胞の遺伝子発現の比較を行い、分化構造維持に関わる分子群の同定を行った。一連の検討でAdhernce junction関連分子の発現低下がポドサイトの成熟分化に重要な役割を果たしていることを明らかにした。また、胎生15.5日齢ラットから摘出した後腎原器培養の系の確立、未分化ベジクル期の糸球体原器の分離に成功しており、平成23年度の研究計画を順調に進めることができたと考えている。
平成23年度は「ポドサイトの分化・成熟機構の解明」を中心に研究を進めた。平成24年度は、「ポドサイトが増殖能を獲得する機構の解明」を目的とした研究を進める。平成23年度の研究で確立した後腎原器器官培養系の培養上清を糸球体上皮細胞のプライマリーカルチャー、マイクロダイセクション法で分離したボウマン嚢上皮細胞培養系に添加し、増殖能誘導能、分化誘導能の有無についての検討を行う。また、この系と並行して既知の増殖因子並びにレチノイン酸などの分化誘導因子での検討も行う。 今回の研究のテーマとしている「糸球体再生法の開発」には多くの難しさがあると考えられ、平成24年度中に「糸球体上皮細胞の増殖法の開発」を達成できない可能性がある。しかし、器官培養系の各時期の材料を用いた次世代シーケンサー解析による遺伝子プロファイリングを進め、ポドサイトへの分化に必要な遺伝子群、ポドサイトを増殖させるのに必要な遺伝子群の同定し、今後の研究の道筋をつけるための基礎データの集積を行う。
平成23年度に次世代シーケンサー解析の立ち上げに成功した。初年度は、大型機器導入にともなう経費から解析に必要な試薬の経費を捻出することができたので、平成23年度に申請した経費の一部を今年度に繰り越すことができた。しかし、平成24年度は次世代シーケンサー解析の試薬は利用者負担となるため、この解析に用いる試薬、器官培養に必要な試薬その他消耗品の経費を申請する。また、研究成果の発表のための学会出席のための旅費、成果発表のための論文作成経費を申請する。
すべて 2012 2011 その他
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (8件) 備考 (1件)
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