研究課題/領域番号 |
23659443
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
松尾 清一 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (70190410)
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研究分担者 |
丸山 彰一 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (10362253)
秋山 真一 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任講師 (20500010)
尾崎 武徳 名古屋大学, 医学部附属病院, 病院助教 (10452195)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 脂肪由来間葉系幹細胞 / 免疫抑制 / 再生医療 / 強皮症 / マクロファージ / メタボローム解析 |
研究概要 |
これまで我々は低血清培養脂肪由来間葉系幹細胞(LASC)が高血清培養脂肪由来間葉系幹細胞(HASC)や骨髄由来間葉系幹細胞(BM-MSC)よりも優れた免疫制御作用を持つことを報告してきた。このLASCによる免疫制御作用は主にT細胞に作用すると考えられているが、我々はLASCがT細胞に加え、マクロファージのフェノタイプを変化させることで免疫制御作用を発揮していることを示してきた。MSCによる免疫制御因子としてIDO、HGFなどが報告されているが、我々はLASCの新たな免疫制御因子の解明をHASC、BM-MSCと比較して行う。 さらに我々は難治性強皮症に対する臨床試験を目的に、細胞培養の新たな系の立ち上げを行っている。この系で作成したLASCが従来のLASCと同等の性質、機能を保有しているのかを確認し、さらにT細胞やマクロファージへの免疫制御作用についても検討する。また、LASCの新たなマーカーを探索し、LASCの同等性についてより厳密に検討する。このように臨床試験で用いるLASCを解析することで、実際の投与におけるLASCの機能を解析していくことが可能であると考えられる。また、現在までマクロファージのM2誘導はラットLASC及びラットマクロファージで確立した実験系である。しかしながら因子解析を行うにあたり、網羅的に解析するにはライブラリー等の情報が確立しているヒトの細胞を用いるべきであると考えられた。そこで、臨床試験用のヒトLASCの開発を行い、このLASCがラットのマクロファージに効果があるかを検討中である。 網羅的解析にはcDNAアレイ、miRNAアレイ、プロテインアレイ、プロテオーム解析、メタボローム解析、ChIP-seq解析を行う予定であり、現在はメタボローム解析用の検体を作成中である。これらの結果を基に、LASCによる新規の免疫抑制剤候補の探索を目的としている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
我々はLASCがHASCやBM-MSCに比べて高いT細胞増殖抑制能及びM2誘導能を有していることを証明してきた。これらの免疫制御作用を解明するため網羅的解析を行うに当たり、臨床試験における人への作用に注目する必要があると考えられた。そのため、最初に臨床試験を行うためのhumanize培養液の開発を行った。Humanize培養液はGMPグレードの試薬を用い、さらに安全性を高めるためにFBSの産地をBSE非発症地域であるオセアニア産のものに変更した培養液であり、この培養液で育てたLASCが従来の培養液で育てたLASCと同等であることの確認を行ってきた。この同等性試験は細胞の形態、1ヶ月間での増殖スピード、6種類からなるMSC表面マーカーの発現率、細胞上清中サイトカイン(HGF、VEGF)の測定で評価している。また、これまでに行ってきた抗体アレイの結果より、HASCに比べ、LASCでは細胞上清中にuPAR、Fas等が多量に含まれていることを確認している。そこで、さらにLASCとしての評価を確立させるため、uPARとFasについてFACS解析を行った。その結果、特にuPARについてLASCで発現率が上昇していることが示された。Humanize培養液で育てたLASCもuPARについて従来のLASCと同等の発現レベルを確認することが出来た。このことから、現在までの検定項目に加え、uPARのFACS結果を基にLASCを規定することが出来ると判断し、これらの項目を満たす細胞を用いて網羅的解析を行うこととした。さらにアレイ解析を行うにあたり、ライブラリーが作成されているヒトで行う必要があると考えられた。そのためM2誘導の実験系について、ラットLASCではなく、ヒトLASCを用いて行えないかを検討している。こうした技術的問題が解決され次第、網羅的な因子解析を進めていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
まずはhumanize培養液を決定し、臨床試験用のヒトLASCの作成を行う。ついでアレイ解析を行うためにヒトLASCを用いたM2誘導の実験系を確立させる予定である。さらに、T細胞の増殖抑制の実験系についてもT細胞の効率的な増殖法を確立するとともに、T細胞やLASCを3ドナー以上から採取し、実験結果が普遍的なものであることを確認していく。また、T細胞の増殖抑制を確認するための手法として、より簡便で安全な実験方法であるRIを用いない増殖assayが利用可能であることを確認していく。これらのT細胞の増殖抑制及びM2誘導に関するヒトLASCを用いた実験系を確立させ次第、MSC(LASC、HASC、BM-MSC)単培養、免疫担当細胞(マクロファージ、T細胞)との共培養、トランズウェルシステムを用いた非接触共培養を行い、細胞上清サンプル、細胞サンプルを作成する。これらのサンプルを用いて既存の免疫制御因子についてELISA解析を行い、さらにMSCにについてFACS解析を行い、形態的、機能的な変化を解析していく予定である。さらにcDNAアレイ、miRNAアレイ、プロテオーム解析、メタボローム解析、ChIP-seq解析を行い、LASCがもつ未知の免疫制御作用因子を特定させていく予定である。最終的にはこれらの解析結果をまとめ、新規の免疫抑制剤の候補となる因子をLASCから作成、その機能評価を行っていく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
細胞培養に関して以下の項目に使用する予定である。LASCの採取、培養のためのコラゲナーゼ、培養液、FBS、basic FGF、ファイブロネクチンの購入に当てる。ヒトBM-MSCの購入に当てる。LASCの性質確認を行うためのELISAキット、M2誘導の確認を行うためのFACS用抗体の購入に当てる。 網羅的因子解析に関して以下の項目に使用する予定である。M2誘導因子及びT細胞増殖抑制因子の解析のため、cDNAアレイ、miRNAアレイ、プロテオーム解析、メタボローム解析、ChIP-seq解析を行う。
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