研究概要 |
申請者らは、これまでに低血清培養型脂肪由来幹細胞(LASC)にはT細胞増殖抑制効果やM2型(免疫調整性)マクロファージ(MΦ)分化誘導促進効果があることを発見し、その効果は高血清培養型脂肪由来幹細胞(HASC)や骨髄由来間葉系幹細胞(BM-MSC)に比べて格段に高いことを見出している。本研究では、LASC、HASCおよびBM-MSCを比較することによりLASCがもつ強い免疫調整効果の分子メカニズムの解析に取り組んだ。 最初にLASCが免疫調整性マクロファージを誘導する際に、LASCとマクロファージとの接着が必要なのか、LASCから分泌される分子が重要なのかを検討した。その方法として細胞は通ることができないが小分子は通過できる膜により培養皿を上下の培養空間に分けて検討した。その結果、LASCからの分泌分子のみでも免疫調整性マクロファージを誘導することは可能であるが、その効果はLASCとマクロファージの接着により増強されることを見出した。 次にLASCがBM-MSCやHASCより多く分泌している分子に注目して、中和実験、刺激実験を行いLASCによる免疫調整性マクロファージへの誘導分子の同定に取り組んだ。その中で、LASC由来のPGE2, IL-6がM2型マクロファージの形質転化に必須であることを見出した。さらにPGE2レセプターとしてEP1, 2 ,3 , 4 が知られているが、アンタゴニストを使用した実験よりPGE2はEP4レセプターを介してM2型マクロファージの形質転化を誘導していることを明らかにした。
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