研究課題/領域番号 |
23659446
|
研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
西中村 隆一 熊本大学, 発生医学研究所, 教授 (70291309)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
キーワード | 発生・分化 / 腎臓発生 |
研究概要 |
成体の腎臓は再生しないが、発生期腎臓の後腎間葉にはネフロン幹細胞が存在し、それが尿管芽と相互作用しながら、糸球体ポドサイト、近位尿細管、遠位尿細管など多系統に分化していく。iPS細胞の樹立以降、2次元での腎臓細胞誘導を多くの研究者が試みているが、それに成功しても3次元構造が作れなければ腎臓再生はおぼつかない。よって本計画は、ネフロン幹細胞を含む発生期の腎臓細胞を使って、3次元立体構造を再構築することを目的とする。腎臓を欠損するマウスの腎臓原基と正常型ネフロン幹細胞を共培養することによって、腎臓の構造回復を試みる。これには、今まで作成してきたSall1ノックアウトマウス及び薬剤誘導性コンディショナルSall1ノックアウトマウスを使用し、後腎間葉の回復をex vivo及びin vivoで検討する。さらに、単一細胞レベルに解離した間葉(ネフロン幹細胞)と尿管芽から、器官培養法で立体構造の再構築に迫るものである。平成23年度は、マイクロドロプレット法による3次元構造再構築を試みた。胎生期の間葉を単一細胞レベルに解離して再作成した凝集塊を、コラーゲンゲル内で尿管芽と接着させて培養した。その結果、部分的ではあるが3次元構造をもつ腎臓様の構造を再現できた。今後、条件を改善するとともに、腎臓を欠損する遺伝子改変マウスを用いて再構築実験を行う。さらに間葉、尿管芽を共に単一細胞に解離してからの3次元構造再構築を試みる予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本来は腎臓を欠損する遺伝子改変マウスを用いて、腎臓の構造回復を検討する予定であったが、交配の効率が悪いため実施できていない。おそらく純系化が進むにつれて、腎臓以外に生殖細胞でも軽度の異常が出現しつつあると推測される。1世代だけ雑種に戻し交配することによって解決をはかりたい。
|
今後の研究の推進方策 |
腎臓を欠損する遺伝子改変マウスを用いて、器官培養 (ex vivo) 及びin vivoで腎臓構造の回復が可能かを検討する。さらに尿管芽も単一細胞に解離し、コラーゲンゲル内で構造の再構築を試みる。しかしin vitroでは、成功してもおそらく非常に小さい構造物が形成されると予測されため、数日の培養後、成体の大網に移植する。大網は血流が豊富で、胎生期腎臓を移植するとかなり大きくなることが知られている。これによってin vitroで作られた3次元構造がどこまで成長可能かを調べることができる。その後、片側あるいは両側の腎臓を摘出することで、大網内に作られた腎臓がどの程度機能的かをみる。
|
次年度の研究費の使用計画 |
妊娠マウスの購入及び腎臓を欠損する遺伝子改変マウスを繁殖させるために、研究費を使用する。培養や移植に際しては、培養液、液性因子、器具などの購入が必要であり、構造構築の程度を検討するために、組織学的試薬を使用する。
|