成体の腎臓は再生しないが、発生期腎臓の後腎間葉にはネフロン幹細胞が存在し、それが尿管芽と相互作用しながら、糸球体ポドサイト、近位尿細管、遠位尿細管など多系統に分化していく。iPS細胞の樹立以降、2次元での腎臓細胞誘導を多くの研究者が試みているが、それに成功しても3次元構造が作れなければ腎臓再生はおぼつかない。よって本計画は、ネフロン幹細胞を含む発生期の腎臓細胞を使って、3次元立体構造を再構築することを目的とする。腎臓を欠損するマウスの腎臓原基と正常型ネフロン幹細胞を共培養することによって、腎臓の構造回復を試みる。今まで作成してきたSall1ノックアウトマウス及び薬剤誘導性コンディショナルSall1ノックアウトマウスを使用し、後腎間葉の回復をex vivo及びin vivoで検討する。さらに、単一細胞レベルに解離した間葉(ネフロン幹細胞)と尿管芽から、器官培養法で立体構造の再構築に迫るものである。 まずマイクロドロプレット法による3次元構造再構築を試みた。胎生期の間葉を単一細胞レベルに解離して再作成した凝集塊を、コラーゲンゲル内で尿管芽と接着させて培養した。その結果、部分的ではあるが3次元構造をもつ腎臓様の構造を再現できた。次いで間葉の再凝集塊をより簡便に作る方法を開発し、それを尿管芽とともに培養したところ、尿管芽が分岐し、糸球体も不完全ながら形成された。しかしそれ以上の成熟は見られず、さらなる条件改善が必要と考えられた。今後、条件を改善するとともに、腎臓を欠損する遺伝子改変マウスを用いて再構築実験を行う。
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