研究課題/領域番号 |
23659447
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研究機関 | 獨協医科大学 |
研究代表者 |
安西 尚彦 獨協医科大学, 医学部, 教授 (70276054)
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研究分担者 |
児嶋 修一 獨協医科大学, 医学部, 准教授 (60178267)
林 啓太朗 獨協医科大学, 医学部, 助教 (10323106)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | トランスポーター / 翻訳後修飾 / 腎臓 |
研究概要 |
SUMO(Small ubiquitin-like protein)はユビキチン様蛋白質の一つで、ユビキチン化と同様な修飾システム(E1, E2, E3)により様々な蛋白質と共有結合し、「第二のリン酸化」と言われる翻訳後修飾システムとして働く。近年膜タンパク質もSUMO化を受け、局在や細胞内輸送に加え、その本来の機能が制御される可能性が示された。研究代表者はこれまでにペプチドトランスポーターPEPT2では、細胞内支持タンパク質PDZK1以外にSUMO-1とSUMO化結合酵素E2であるUbc9と結合すること、また腎尿細管基底側膜の芳香族アミノ酸トランスポーターTAT1でも、SUMO-1およびSUMO化リガーゼE3であるPIASと結合することを見出している。本研究はSUMO化―脱SUMO化による新しいトランスポーター輸送制御機構およびPDZ結合との拮抗作用の分子機序の解明を目的とする。 本年度はSUMO化関連タンパク質と腎尿細管トランスポーターPEPT2/TAT1との結合の分子機序の解明に焦点を当て、a) 人工遺伝子変異体作成とそれを用いた酵母Two-Hybrid法による確認とb) SUMO化関連蛋白質共発現によるトランスポーター輸送活性への影響の解析を行った。a)では蛋白質間相互作用に重要なTAT1及びPEPT2のC末端アミノ酸残基を決定するため、それらのC末端のアミノ酸欠損体をPCR法により作成を行い、それをベイト、Ubc9を持つプレイとの間での酵母Two-Hybrid法を行い、結合影響部位推定に至った。b)では哺乳類培養細胞のHEK293にトランスポーターPEPT2/TAT1の正常型とSUMO化部位変異体のそれぞれにSUMO化関連蛋白質を共発現させ、PEPT2およびTAT1の輸送活性を調べた所、輸送活性が変化することを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究代表者である安西は、申請時に所属していた杏林大学から平成23年4月より現所属へと異動となった。4月から9月までは初めてとなる薬理学講義・実習に忙殺されたため、前任地からの検体の移設に時間がかかってしまったことに加え、新所属での研究環境整備にも予想以上に手間取ったため、4月の交付申請時に予定していたc) GSTプルダウン法による蛋白間相互作用の確認と、d) トランスポーターPEPT2/TAT1のSUMO化の証明がそれぞれの検討開始がずれこんでしまったため、上記2項目の最終的な成果を年度内に報告するまでに至らなかった。
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今後の研究の推進方策 |
上記の達成度に記載した通り、平成23年度内に終えるべきものが終えられなかったことから、次年度使用額の研究費に関しては、c) in vitroでの蛋白質間相互作用の確認のため平成23年度に人工合成したMBP(マルトース結合蛋白質)融合SUMO化関連タンパク質(ベイト)と、トランスポーターTAT1及びPEPT2のGST融合蛋白質(プレイ)の大腸菌を用いて大量に発現・精製、およびd) トランスポーターPEPT2/TAT1およびHA-tagged SUMOの遺伝子共導入を行った哺乳類培養細胞調整液を用いた免疫沈降実験に利用する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度に得られた、および得られる予定であった結果を基にして、平成24年度ではさらに、1. SUMO化関連タンパク質と腎尿細管トランスポーターPEPT2/TAT1との結合の分子機序の解明、を引き続き進めると同時に、2. PEPT2/TAT1の細胞内C末端を介するPDZ相互作用のSUMO化制御機序に対する影響」について、以下の検討を行う。1-e) トランスポーターPEPT2/TAT1の細胞内C末端領域におけるSUMO化部位の同定:PEPT2およびTAT1の細胞内C末端領域にはψKXD/E(ψは疎水性アミノ酸)というSUMO化のコンセンサス配列がある。このモチーフとSUMO化関連タンパク質が結合するかを調べるため、同部位のLysの部位指定突然変異体を用いて、酵母Two-hybrid法およびin vitro binding法により検討する。2-a) SUMO化関連タンパク質のPEPT2及びTAT1の細胞内局在変化の観察:GFP融合PEPT2及びTAT1タンパク質発現ベクターの構築後、同ベクターの哺乳類発現細胞へのトランスフェクションを行い、細胞内PEPT2及びTAT1蛋白質発現部位を共焦点レーザー顕微鏡により確認する。2-b) PDZ結合のSUMO化関連蛋白質誘導性トランスポーター輸送活性変動への作用:ほ乳類培養細胞ないしアフリカツメガエル卵毋細胞発現系に、トランスポーターPEPT2/TAT1のC末端のPDZモチーフの欠損変異体とそのSUMO化部位変異体を用い、1-d)と同様に、PEPT2およびTAT1輸送活性を検討する。
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