研究概要 |
平成23年度は、分子量で分画取得した100kDa以上のサイズの抗Aβオリゴマーがカルシウム流入効果を最大限に発揮し、細胞死を惹起することの傍証を得た。また培養神経細胞におけるこのカルシウム流入効果に起因した細胞死を既存のカルシウムチャンネル阻害薬(MK-801, D-AP5, Nifedipine)は阻害できず、我々の開発したAβオリゴマー特異的抗体のみが阻害可能であることを確認した。また市販の抗Aβ抗体(抗Aβオリゴマー抗体A11を含む)ではその阻害活性を認めず、我々の抗体が認識する構造体のみに、カルシウムチャンネル活性が存在すると考えられた。また、アルツハイマー病モデルマウスに施行した免疫療法でその記憶障害発症効果が確認されているが(Takamura A et al, Mol Neurodegener, 2011)、その治療マウス脳解析の結果、Ca2+/カルモジュリン依存性プロテインキナーゼ(CaMKII)の自己リン酸化が亢進していること、一方でNMDA受容体のNR2Bのリン酸化には著変を認めぬことが明らかとなり、NMDA受容体非依存的なカルシウム流入がアルツハイマー病モデルマウスにおける記憶障害発症に深く関与していることを明らかとした。一方、CREB自体の変化は明らかでなく、一方でPSD95の優位な維持効果が治療マウスで認められる点から、Aβオリゴマー自体が形成するカルシウムチャンネルの主座はシナプスと考えられ、Aβオリゴマーの神経毒性発揮部位として矛盾しない所見であると考えられた。
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