研究課題/領域番号 |
23659457
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
神田 隆 山口大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (40204797)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 不死化細胞 / 内皮細胞 / 神経膠細胞 |
研究概要 |
本研究の目的は、(1)研究代表者の確立したヒト不死化細胞株作製技術を更に発展させ、神経細胞を除くヒト中枢神経系・末梢神経系構成細胞の不死化細胞株を網羅的に作製し、個々の細胞の生物学的特性を把握する基盤を整備すること、(2)複数種のヒト不死化細胞株を用いて神経系のin vitroモデルを再構築することにより、より生理的条件に近い形での実験系を樹立して難治性神経疾患の解明に寄与することである。生理的条件に近いヒト不死化細胞が多量に得られることは、今後のヒト神経疾患の分子生物学的研究に大きく寄与しうるものと考える。2年間のうちにヒト神経系不死化細胞株を網羅的に樹立するという目標を立て、複数の細胞を標的として複数のプロジェクトを並行して走らせた。細胞毎に最も適切な分離手技や細胞環境を構築する必要があるため、初年度はヒト骨格筋由来微小血管内皮細胞不死化株の樹立のみ成功した。方法:文書による承諾を頂いた剖検脳および末梢神経筋材料、手術標本を用い、定法にのっとって細胞の分離と一次培養を行った。コロニーが形成された段階でレトロウイルスベクターを用いて温度感受性SV40 large T抗原、続いてヒトテロメラーゼ遺伝子をtransfectし、不死化形質を獲得した単独細胞を複数クローニングして樹立細胞株の候補とした。目的とする細胞の生理学的形質を最も良好に保持している細胞株をピックアップし、細胞株の樹立とした。得られたヒト骨格筋由来微小血管内皮細胞不死化株はvon Willebrand分子の発現、acetylated LDLの取りこみなど基本的な内皮細胞の特徴を有していた。本研究の重要性:今回得られたヒト骨格筋由来微小血管内皮細胞不死化株は、ヒト筋肉疾患、とくに微小血管障害が本体と考えられている皮膚筋炎の病態解明に大きな貢献をするものと期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は複数の細胞樹立プロジェクトを走らせ、中でも脈絡叢上皮細胞と脳血管平滑筋細胞が第1優先順位にあったが、同細胞は分離条件や至適細胞環境が未だ確立しておらず、細胞株の樹立には至っていない。平成24年度も継続して樹立を試みる予定である。一方、ヒト骨格筋由来微小血管内皮細胞が世界に先駆けて樹立できたのは極めて傑出した研究成果であると考えている。ヒト骨格筋由来微小血管内皮細胞に関しては至適培養環境もほぼ研究代表者の教室で確立しており、トランスポーターやジャンクション分子などの解析も進行中である。ヒト皮膚筋炎血清を用いたin vitro実験も平成24年度中に施行できるものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度に株化を目標とするヒト細胞は、脳軟膜細胞、髄膜血管細胞(内皮細胞、血管周細胞、平滑筋細胞)、オリゴデンドログリアに加え、末梢神経神経周膜細胞である。余力があればミクログリアなども株化の対象とする。初年度の実験により、各細胞毎に至適培養条件が大きく異なることが明らかになっており、平成24年度は条件整備にも配慮した一次培養を心がけることで対処する。本研究は剖検脳という不定期に供給される出発材料に依存する。現時点で最も研究を阻害する因子となっているのは、剖検数の絶対的な減少によって培養に耐えうるヒト剖検脳が十分に収集できないことであり、この点は研究代表者の所属する組織以外の協力施設を増やすことで対処したいと考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
初年度に確立できた細胞株はヒト骨格筋由来微小血管内皮細胞のみであり、他の細胞は株化から大量培養、機能解析のプロセスに乗らなかったため、培養器具や培地、血清などの購入費用に余剰ができた。平成24年度は複数の細胞株樹立が見込めるため、この費用を消耗品購入に充填する予定である。平成24年度の使用予定は、成果発表のための旅費70万円と、初年度からの繰越金を合わせた121.8万円での実験用消耗品購入である。
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