研究概要 |
抗TNF-alphaモノクローナル抗体が、神経変性の最終段階での炎症過程を阻害することにより生命予後、機能予後を好転化する可能性を考え、筋萎縮性側索硬化症のモデルマウスであるヒトSOD1-G93Aトランスジェニックマウスに投与を行った。投与は腹腔内投与を行い、投与量としてリュウマチのモデルマウスに使用された量と同じ10mg/kgを投与した。生存日数、体重、運動能力(Paw grip endurance test)を記録解析した。さらに100日齢の各群3-5匹のマウスの剖検を行い、神経病理学的に残存している脊髄運動ニューロン数、グリオーシスなどを免疫組織化学的な手法を用いて評価した。Kaplan-Meire生存曲線を作成、さらに治療法による2群の累積比較にはlog-rank testとGehan-Wilcoxon検定を行ったところ、投与群、非投与群間では有意差は認められなかった(P値=0.639および0.787)。病理所見では運動ニューロン数では有意差は認められなかったが、アストロサイト、ミクログリアの活性化では非投与群と比べ投与群では有意に抑制されていた。非神経細胞であるグリア細胞の活性化を有意に抑制するという結果よりTNF-alphaが神経変性の一過程、おそらく最終段階の炎症機転に関与していることは間違いない。しかし、TNF alphaを標的にした治療では臨床的に改善が認められず、その理由として、TNF alphaの阻害が不十分であり、下流で生じると考えられているNF kappa, JNK-AP-1, caspase 3などの活性化が起こった可能性がある。今後、apoptosisが惹起されていないかを調べ、抗TNF-alphaモノクローナル抗体の指摘投与量の検討が必要と考えられる。
|