研究課題/領域番号 |
23659459
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
吉良 潤一 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (40183305)
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研究分担者 |
松下 拓也 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (00533001)
吉村 怜 九州大学, 大学病院, 助教 (20596390)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 多発性硬化症 / 視神経脊髄炎 / Balo病 / コネキシン / アクアポリン4 / グリア間相互作用 / アストロサイトパチー |
研究概要 |
我々はBalo病における広汎なAQP4脱落を見出し、更に多発性硬化症(MS)や視神経脊髄炎(NMO)の一部でも抗体や補体の沈着がないAQP4脱落を発見し、抗体非依存性アストロサイトパチーの存在を提唱している。今回アストロサイトとオリゴデンドロサイト/ミエリン間において細胞間情報伝達に重要な役割を果たすコネキシン(Cx)蛋白に着目した。中枢神経では、アストロサイトにCx30、Cx43、オリゴデンドロサイトにCx32、Cx47が発現する。MS5例、NMO11例、Balo病4例の剖検例における各種Cxの発現パターンを病理学的に解析した。Balo病では、全例でCx43はAQP4と同様に広汎な脱落を認め、GFAP陽性gemistocyteは残存していた。さらに、ミエリン側のCx32やCx47も非脱髄層を含め広汎に発現低下が認められた。辺縁の早期病巣ではMAGが先行する脱髄(patternIII)を認めたが、同部位ではAQP4やCx43も既に脱落しており、早期からアストロサイト障害が生じている可能性が示唆された。また、MS2例の急性期病巣でもAQP4やCx43が脱落し、GFAP陽性アストロサイトが残存する所見が認められた。NMO4例では、血管周囲性に抗体や沈着を伴いAQP4やCx43が脱落するアストロサイトパチーを認めたが、一方で実質内に広汎に形成された急性期病巣では、MAG脱落が先行するpatternIII脱髄が認められた。加えて、別のBalo病患者6例の血清中に抗AQP4抗体や抗Cx43抗体、抗Cx32抗体は認めなかった。脱髄性疾患では、急性期からAQP4とCx43脱落を特徴とするアストロサイトパチーや、MAG脱落を特徴とする脱髄が共通に生じており、Cx gap junctionを介するアストロサイト-オリゴデンドロサイト間情報伝達の広汎な障害が病態に関与している可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
MS、NMO、Balo病の剖検標本を用いて、コネキシンを中心としたアストロサイト、オリゴデンドロサイト関連タンパクの発現変化を神経病理学的に詳細な検討を行い、コネキシン43やアクアポリン4の発現低下が脱髄性疾患の急性期病巣において共通に認められること、NMOでもMAG脱落を特徴とする広汎な脱髄をみとめること、アストロサイトの血管周囲足突起に特異的に発現するMLC1が脱落することなどを見出した。また、これらの変化は、血管周囲性の抗体や活性化補体の沈着を認めず、抗体非依存性にも生じうることを発見した。Balo病の病理学的研究成果と、Balo病患者における抗AQP4抗体、抗コネキシン43、コネキシン32抗体の測定結果について、論文発表することができた(Masaki K, et al. Acta Neuropathol in press)。また、これらの研究成果により、第4回環太平洋アジア多発性硬化症治療研究学術会議(PACTRIMS)において学会賞を受賞した。
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今後の研究の推進方策 |
病理学的研究は、他施設との共同研究を含め、tumefactive MSや、Marburg型MSなど、MSの中でも広汎な病巣を形成する特殊型の生検や剖検標本を使用したコネキシン蛋白の解析をすでに進めている。また、コネキシン蛋白の経時的変化や病態への関与をより機能的に解析するために、MSの動物モデルである実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)を用いた研究を開始している。MOG35-55ぺプチドをC57/BL6マウスに注射して誘導するEAEはすでに作成中であり、各種コネキシン蛋白やMLC1、AQP4などの組織免疫染色がマウス組織で染色可能であることも確認済みである。ウェスタンブロットやreal-time PCR法などと併せて詳細な解析を行う方針である。さらに、コネキシンが形成するギャップ結合やヘミチャンネルを標的とした治療を開発するためギャップ結合阻害薬や活性化薬剤を用いて、EAEがどのように修飾されるのかを評価する予定である。また、Balo病患者血清で測定した抗コネキシン抗体と同様の測定系を用いて、MSやNMO症例での抗体の存在について確認していく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
ヒト検体を用いたこれまでの研究に加え、モデル動物を使用した機能的解析を開始しており、酵素抗体法および蛍光抗体法に使用する各種一次抗体や二次抗体、MOG35-55ペプチドなどの抗原蛋白、CFAや百日咳毒素などのアジュバンド、マウス購入費、飼育費、コネキシンを標的とする化合物の購入、ウェスタンブロットやPCR法で使用する各種試薬、抗体測定に用いている培養細胞系に必要な消耗品の購入、などに使用させていただく予定である。
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