研究概要 |
我々は中枢性脱髄性疾患において、アストロサイトやオリゴデンドロサイト/ミエリン間などグリア細胞間情報伝達に重要な役割を果たすコネキシン(Cx)蛋白の関与について注目してきた。中枢神経系では、アストロサイトにCx30、Cx43、オリゴデンドロサイトにCx32、Cx47が発現する。MS6例、NMO11例、Balo病4例の剖検例における各種Cxの発現パターンを病理学的に解析した。Balo病では、全例でCx43はAQP4と同様に広汎な脱落を認め、GFAP陽性gemistocyteは残存していた。さらに、ミエリン側のCx32やCx47も非脱髄層を含め広汎に発現低下が認められることを見出した。さらに辺縁の早期病巣ではMAGが先行する脱髄(patternIII)を認めたが、同部位ではAQP4やCx43も既に脱落しており、早期からアストロサイト障害が生じている可能性が示唆された(Masaki, Acta Neuropathol 2012)。また、MS3例の急性期病巣でもAQP4やCx43が脱落し、GFAP陽性アストロサイトが残存する所見が認められた。NMO4例では、血管周囲性に抗体や沈着を伴いAQP4やCx43が脱落するアストロサイトパチーを認めたが、一方で実質内に広汎に形成された急性期病巣では、MAG脱落が先行するpatternIII脱髄が認められた(submitted for publication)。加えて、Balo病6例、MS30例、NMO30例の血清中に抗AQP4抗体や抗Cx43抗体、抗Cx32抗体は認めなかった。中枢性脱髄性疾患では、急性期からAQP4とCx43脱落を特徴とするアストロサイトパチーや、MAG脱落を特徴とする脱髄が共通に生じており、Cx gap junctionを介するアストロサイト-オリゴデンドロサイト間情報伝達の広汎な障害が病態に関与している可能性が示唆された。
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