研究概要 |
我々は、非コードRNA(ncRNA)がTLS(Translocated in liposarcoma)/FUSに結合して、TLS機能を制御するRNAリガンドとして作用することを報告した(Nature:454, 126-130,2008)。最近、TLSは筋萎縮性側索硬化症(ALS)の原因遺伝子として再発見された。質量分析の結果は、ALS変異型TLSにはアルギニン(ARG)特異的メチル化酵素PRMT5の結合が消失していた。この結果から、変異型TLSはARGメチル化消失とそれに伴うタンパク質結合の異常から、不溶性凝集体を形成してALSを発症する仮説を立てた。 本研究の目的は、この仮説の検証と変異型TLSのPRMT5結合を回復させるRNAリガンド作成である。このRNAリガンドはALS治療法開発に大きな前進をもたらすと期待される。なお、PRMT1に関しても同様な結果が得られたことから、これについても解析を進めている。平成23年度は、PRMT5によりメチル化される正常型TLSのアルギニン残基を正確に決めることから始めた。我々はTLSのR216/R218, R242, R394がジメチル化されることを報告した(Du, BBRC:404, 991-6,2011)。そこで、これらのジメチル化されたアルギニン残基のみを認識できるモノクローナル抗体の作成に着手した。PRMT5は、対称型ジメチル化を触媒し、PRMT1は非対称型ジメチル化を触媒することが知られている。そこで、R216/R218, R242, R394近傍の10アミノ酸残基を含むペプチドに、対称および非対称のジメチル化アルギニンを導入したペプチドを合成し、総計6種類のモノクローナル抗体の作成を試みた。その結果、R242の非対称型ジメチル化(PRMT1が触媒)以外の、5種類のモノクローナル抗体作成に成功した。これは大きな進捗である。
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次年度の研究費の使用計画 |
以下のような研究費の使用計画を立てた。1.物品費 720,0002.旅費 300,0003.講演者謝金 100,0004.その他 150,000
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