研究課題
我々は、非コードRNA(ncRNA)がTLS(Translocated in liposarcoma)/FUSに結合して、TLS機能を制御するRNAリガンドとして作用することを報告した(Nature,2008)。最近、TLSは筋萎縮性側索硬化症(ALS)の原因遺伝子として再発見された。質量分析の結果は、ALS変異型TLSにはアルギニン特異的メチル化酵素PRMT5の結合が消失していた。この結果から、変異型TLSはアルギニン・メチル化消失とそれに伴うタンパク質結合の異常から、不溶性凝集体を形成してALSを発症する仮説を立てた。本研究の目的は、この仮説の検証と変異型TLSのPRMT5結合を回復させるRNAリガンド作成である。我々はTLSのR216/R218がジメチル化されることを報告した(BBRC, 2011)。そこで、これらのジメチル化されたアルギニン残基を認識するモノクローナル抗体の作成を試みた。その結果、R216/218のジメチル化を識別する抗体F4を得た。このF4抗体を用いて、TLSのメチル化を詳細にしらべると、PRMT5によるTLSのR216/218のメチル化には補助因子の結合が必須であった。これより、ALSのメチル化異常にこの補助因子の機能不全が予想された。F4抗体を用いたウエスタンブロットから、ALS変異型TLSでのメチル化の低下が見られた。さらに、TLSに特異的に結合するcyclin D1プロモーター由来長鎖非コードRNA(pncRNA-D)を同定し、このRNAの結合がALS型TLSのメチル化不全を回復させるか鋭意検討中である。このpncRNA-Dは、ALS治療に応用可能な核酸医薬の有望なシードとなる可能性がある。以上のように、本研究は有意な実績得たと自負している。
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Chem Biol
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http://www.saitama-med.ac.jp/genome/
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