研究概要 |
DNAメチル化は代表的なエピジェネティクス制御の様式であり、個体の初期発生や癌抑制遺伝子の発現制御などにおいて精力的に研究されている。しかしながら、正常の成体組織あるいは肥満や糖尿病などの成人期に発症する慢性疾患における生理的・病態生理的意義は不明である。本研究は、従来、全く知見のなかったDNAメチル化に着目した骨格筋代謝のエピジェネティクス制御による医学応用を目指すものである。本研究では、denovo(新規)メチル化酵素Dnmt3aのflox/floxマウスと、αアクチンプロモーターによりCREリコンビナーゼを骨格筋特異的に発現させたトランスジェニックマウスを交配し、Dnmt3aの骨格筋特異的欠損マウス作出した。qPCR法により組織別のDnmt3aの遺伝子発現を検討したところ、Dnmt3aの骨格筋特異的な発現抑制が観察された。MIAMI法(Microanay-based Integrated Analysis of Methylation by Isoschizomers)(Oncogene 25:3059-3064,2006)により、Dnmt3a欠損マウス骨格筋のDNAメチル化プロフィールを網羅的に検討したところ、野生型マウスの骨格筋と比較して、数十の遺伝子において顕著なDNAメチル化レベルの減少が認められた。複数の遺伝子については、バイサルファイト法によりDNAメチル化変化を確認した。メチル化減少した遺伝子のバイオインフォマティクス解析により、転写抑制因子類をコードしているものが多く認めれ、DNAメチル化標的遺伝子である可能性が示唆された。DNAメチル化標的遺伝子の発現と骨格筋の表現型の変化のさらなる検討により、DNAメチル化を標的とする医学応用への発展が期待される。
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