研究概要 |
2型糖尿病動物モデルマウスのインスリン標的臓器の発現プロファイル解析によって肥満において発現が亢進する遺伝子を検索し、phosphatidylethanolamine N-methyltransferase (PEMT)を同定した。PEMTは肝臓におけるphosphatidylcholine (PC) 生合成酵素であり、PEMT経路はPC合成のマイナー経路として知られている。本研究ではPEMTのメタボリックシンンドロームにおける意義について検討した。Pemtノックアウトマウスを作製し、その表現型について検討した。5週~25週まで高脂肪高蔗糖(HF)食で飼育すると、pemt+/-, pemt-/-の体重増加はpemt+/+と比較して夫々~17%, ~22%抑制された。内臓脂肪重量もpemt-/-ではpemt+/-とpemt+/+と比較して有意に減少し、また脂肪細胞サイズの縮小も認められた。糖負荷試験およびインスリン負荷試験を行うと、pemt+/+マウスに比べて、pemt+/-マウスでは糖代謝の改善が認められ、さらにpemt-/-マウスでは、より強いインスリン抵抗性の改善と血糖の低下が認められた。HF飼育pemt-/-マウスでは体重当たりの摂餌量が多い一方で、酸素消費量も増加していた。ところがpemt-/-では著しい肝脾腫を呈し、肝組織では巨大脂肪滴や炎症細胞浸潤・アポトーシスを伴う脂肪肝炎を呈し、AST・ALTが上昇していた。すなわちPEMT阻害は肥満における体重や脂肪増加の抑制に対しては有効であるが、脂肪肝炎を惹起することが判明した。
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