申請者は破骨細胞の分化と機能にエネルギー代謝が重要な役割を果たしていることを示してきた。そこで今研究の目的は全身のエネルギー代謝を司る脂肪酸の組成変化が内因性カンナビノイドリガンドを介して破骨細胞にどのような影響をあたえるのかを検証し、エネルギー代謝による破骨細胞活性化のメカニズムを明らかにすることにより、骨粗鬆症治療への新たなターゲットの指針を得ることである。Elovl6 KO マウスにおける破骨細胞のフェノタイプを観察した結果、Bone Marrow macrophage (BMM)において増殖(BrdUおよびMTTアッセイ)の促進がみられ、それに伴って成熟破骨細胞への分化(TRAPアッセイ)も助長され、骨吸収という破骨細胞の機能の面(Pitアッセイ)も活性化されていた。しかしこの際の分化マーカーおよびシグナル伝達経路をみてみると、mRNAレベルではそれほど変わっていなかった。そこで、細胞周期に関連する遺伝子発現をみてみると、cyclinに関係する遺伝子のいくつかが上昇していることが分かった。細胞また骨芽細胞においても細胞の増殖および分化に亢進がみられた。こちらでは分化マーカー、特に分化後期で発現する遺伝子の発現が増加していることがみられた。しかしながら発生過程での軟骨や骨化に影響はみられなかった。さらにマイクロアレイやメタボローム解析において、TCA回路の活性化、ATPやGTPによるエネルギーチャージ量の増加、解糖系の促進等がみられた。加えて、破骨細胞分化の過程で脂肪酸の伸長および不飽和化がみられることから、脂肪酸の組成祖変化がエネルギー代謝や細胞周期に影響を与え細胞の増殖を調節すると考えられる。
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