研究課題
私たちは新規生理活性物質を探索するプロジェクトにおいてケマリンを同定した。私たちを含む4つのグループから独立して発見されたケマリンは新規アディポカインとして注目されているがその生理機能は不明である。私たちはノックアウトマウスを用いて解析を行い、ケマリンノックアウトマウスにおいては、耐糖能異常、インスリン抵抗性を呈することを見いだしたことから、ケマリンがインスリン分泌、インスリン感受性の両方を調節するホルモンであることを発見した。具体的にはグルコースクランプ試験では、筋肉におけるインスリン感受性が改善している一方、肝臓における糖新生が亢進していた。さらにインスリン分泌について詳細に解析したところ、ケマリンノックアウトマウスの膵島ではグルコース依存性インスリン分泌が低下しており、その機序としてβ細胞機能調節に重要な転写因子MafAの発現が低下していた。MafAの発現を単離膵島においてレスキューしたところ、グルコース依存性インスリン分泌が改善したことから、ケマリンは転写因子MafA発現を調節することによりβ細胞機能を制御していると考えられた(Scientific Reports 2011 1 123 DOI:10.1038/srep00123 )。またヒトの糖尿病との関わりを明らかにするために血中濃度を測定したところ、男性糖尿病患者においてケマリン血中濃度が低下していることを明らかにした(EJ 2012 60 37-44 )。現在さらに解析を進めケマリンが褐色脂肪組織の機能調節に重要な役割を果たしていることを見出し、投稿準備中である。
2: おおむね順調に進展している
2本の論文のみならず、本課題のメインテーマである褐色脂肪機能調節機構を明らかにすることができ、論文投稿にまで至ったことから目標に達していると考えている。
ケマリンの褐色脂肪調節機構として副腎髄質機能を介していることが明らかになった。この新しい臓器連関のパラダイムについてその機序を詳細に明らかにしていく。
主にケマリンノックアウトマウスの副腎髄質の特徴、副腎髄質細胞におけるケマリンの作用についてより詳細な解析を進めていく。そのために必要な抗体、実験試薬、マウスの維持に使用する。
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すべて 雑誌論文 (10件) (うち査読あり 10件) 学会発表 (9件) (うち招待講演 5件) 図書 (7件) 備考 (1件)
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http://www.med.kobe-u.ac.jp/im2/doctor/activity/acti-04.html