研究課題
私たちは新規生理活性物質を探索するプロジェクトにおいてケマリンを同定した。私たちを含む4つのグループから独立して発見されたケマリンは新規アディポカインとして注目されているがその生理機能は不明である。私たちはこれまでにノックアウトマウスおよび糖尿病患者血清サンプルを用いて解析を行い、ケマリンが欠乏すると糖尿病を呈すること、糖尿病では血中濃度が低下していることを発見した。私たちの作製したケマリンノックアウトマウスでは、インスリン分泌低下、インスリン感受性の低下を認め、ケマリンが糖尿病発症に関わるホルモンであることが明らかとなった。その機序として、単離ラ氏島の機能解析、グルコースクランプによる解析の結果、ケマリンがβ細胞の機能を直接制御すると同時に、肝臓における糖新生を調節していることが明らかになった(Scientific Reports 2011)。さらにヒトケマリン特異的ELISAの測定系を樹立し、糖尿病患者における血中濃度を測定したところ、糖尿病患者では有意に血中ケマリン濃度が低下しており、ケマリン血中濃度の低下が糖尿病におけるインスリン分泌能低下の原因としてヒトにおいても重要な役割を果たしている可能性が示唆された(Endocrine J 2013)。そしてさらに解析を進めるうちにケマリンノックアウトマウスが肥満を呈し、体温、耐寒性の低下、褐色脂肪の形態異常を示すことを見いだした。その機序について解析を進めたところ、ケマリンノックアウトマウスでは寒冷刺激における副腎髄質機能低下が存在することが明らかになった。これらの結果からケマリンは副腎髄質機能調節を介して褐色脂肪細胞を制御し、エネルギー消費において重要な役割を果たしていることが示された(論文投稿中)。
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