研究課題
これまで我々は、ATL患者のPBMCにおいて、T細胞分化に関わるIkarosファミリー転写因子、Heliosの野生型がほとんど消失し、エクソンを複数欠損した短いtranscript variantが多数発現していることを発見した。その中でATL患者で特異的かつ高頻度に発現しているHelios-5(Hel-5)型variantに注目し、そのコードするHel-5 isoformがATL細胞に与える影響について検討してきた。H23年度にはHel-5がDNA結合能、転写抑制能を持たないドミナントネガティブ型isoformであることを確かめた。そこでH24年度にはHel-5を強制発現させたJurkat細胞の細胞増殖能やアポトーシス感受性を検討した。その結果、Hel-5を発現している細胞では、細胞増殖能が増大し、アポトーシス感受性が低下していることが分かった。さらにHel-5過剰発現、またはwtHeliosやIkalosをノックダウンしたJurkat細胞において遺伝子発現マイクロアレイ解析を行った。その結果、これらの細胞で共通してS1PR1およびS1PR3 mRNAの発現が上昇しており、S1P経路を過剰に活性化させている可能性が示唆された。S1Pは5つのGタンパク質共役受容体S1PR1~5を介して細胞の増殖、生存、運動性の向上、ケモカインなどのサイトカインの産生などを引き起こす。Hel-5過剰発現、またはwtHeliosノックダウンJurkat細胞をS1P経路阻害剤 FTY720 存在下で培養すると、増殖が抑制され細胞死が誘導されやすくなることがわかった。これにより、ATL細胞でのwtHeliosの低下やHel-5の過剰発現によって引き起こされる細胞増殖能の増加や抗アポトーシス能が、S1P経路の過剰活性化に依存している可能性が示唆された。
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