研究課題/領域番号 |
23659486
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
中尾 眞二 金沢大学, 医学系, 教授 (70217660)
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研究分担者 |
赤塚 美樹 藤田保健衛生大学, 医学部, 准教授 (70333391)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 再生不良性貧血 / 肝炎関連再生不良性貧血 / HLA / 片親性二倍体 / 抗HLA抗体 |
研究概要 |
当初の研究計画に基づき、新規再生不良性貧血(再不貧)症例を対象としてHLA-Aアレル欠失血球のスクリーニングを行った。肝炎後再不貧に特に注目し、HLA欠失血球陽性例の頻度と、再不貧の自己抗原提示に強く関与していると考えられるHLA-A*02:01、A*02:06、A*31:01、B*40:02の4つのクラスIアレル頻度を検討した。その結果、HLA欠失血球陽性例の頻度は、再不貧全体では311例中40例(13%)であったのに対して、肝炎後再不貧では、17例中5例(29%)と有意に高頻度であった(P=0.05)。一方、上記の4アレルの少なくとも一つを保有している例の割合は、再不貧全体では311例中190例(61%)、肝炎後再不貧では26例中19例(73%)と、肝炎後再不貧で保有率がより高い傾向がみられた。また、それぞれが健常対照者(4091例中1491例、36%)よりも有意に高値であった(P<0.001)。したがって、肝炎後再不貧においては、ハイリスクアレルによって提示される造血幹細胞抗原に特異的な細胞傷害性T細胞(cytotoxic T cell、CTL)が、発症に特に強く関与していることが示唆された。現在、肝炎後再不貧におけるHLA欠失血球の頻度を、症例数を増やして検討中である 。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
関連施設の協力を得て、多くの再生不良性貧血(再不貧)症例検体を集積し、白血球におけるHLA-Aアレル欠失の有無をスクリーニングできた。これによって、再不貧全体と、免疫病態との関連性が特に強いとされている肝炎関連再不貧患者のHLA欠失血球検出頻度を明らかにすることができた。肝炎関連再不貧では、再不貧が何故肝炎より遅れて発症するのかが不明であったが、今回の検討により、再不貧の病像形成に関与しているのは細胞傷害性T細胞(CTL)ではなく、CTLによる肝細胞や造血幹細胞の攻撃に続いて起こるサイトカインであることが明らかになり、この2段階のメカニズムが、肝炎発症に遅れて再不貧が発症する原因であることが示唆された。 一方、CTLを単離するための試みとして、HLA-B*40:02遺伝子を導入することによていHLA-B61分子の発現を誘導したK562細胞を用いることにより、患者末梢血T細胞からのCTL誘導を試みているが、培養条件が至適化されていないため、現時点ではCTLの作製に至っていない。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度の研究により、HLA-B*40:02を有する肝炎関連再不貧症例を対象として、末梢血T細胞からCTLを分離することが有用と考えられたので、患者の協力を得て、引き続きCTLの分離を試みる。これまでの検討により、材料として新鮮(非凍結)で純化したT細胞をレスポンダーとして用いることが明らかになったため、必要に応じて患者T細胞をソーティングし、HLA-B*40:02遺伝子導入K62細胞でこのT細胞を繰り返し刺激することにより、CTLの樹立とクローニングを試みる。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究費は、上記にCTL分離とクローニング、cDNAライブラリー作成などに必要なモノクローナル抗体、培養試薬、DNA合成酵素などの消耗品に使用する。
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