研究課題
In vitroでOPB-31121の作用機序の解明とin vivoで本薬剤適合癌種の選択とマウスモデルでの薬効確認を行った。試験管内で蛋白合成したSTAT3をリコンビナントなJAK2またはLynを酵素としてインビトロキナーゼ反応を行い、その反応に対するOPB-31121の阻害活性を検討し、細胞内にはOPB-31121のSTAT3への作用を媒介する因子が存在し、これを介してOPB-31121はJAK2などの上流キナーゼ活性を阻害する事なく、STAT3のリン酸化を阻害することを示唆するデータを得た。また、AML細胞株HEL92.1.7に対しOPB-31121を添加し、その細胞溶解液を用いてウエスタンブロットを行い、細胞内でもJAK2のリン酸化を阻害する事無くSTAT3のリン酸化が阻害されている事を確認した。多種類の細胞株で本薬剤の薬効を調べ、本薬剤が多彩な造血器悪性腫瘍に対し効果がある中でも、BCR-ABL、FLT3変異、JAK2変異などその変異によりSTATの活性化が起こり、それが腫瘍細胞の生存に重要である事が確立されている遺伝子変異を持つ腫瘍細胞は高率に本薬剤感受性である事を発見した。こうした変異を持つ白血病の患者より採取した白血病細胞をNOD/SCID/IL2-Rgammac-/- (NOG)マウスに移植したマウス白血病モデルを作成し(Ph+ALL 3例、 CML-BC T315I変異陽性 1例、FLT3/ITD陽性AML 1例)、これに対しOPB-31121(200〜300mg)を投与し著明な腫瘍退縮効果(T/C: 4〜58%)を確認した。さらにヒト正常臍帯血を移植したマウスを作成し、これに対する薬効を調べ、本薬剤がヒト正常造血細胞にはほとんど抑制効果がないことを確認した。
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